COVID-19 期間に急性期ケア病院において個人防護具などの感染予防・制御実践が院内感染症の有病率に及ぼした影響:システマティックレビューおよびメタアナリシス★
Impact of infection prevention and control practices, including personal protective equipment, on the prevalence of hospital-acquired infections in acute care hospitals during: a systematic review and meta-analysis J.K. Teus*, L. Mithen, H. Green, A. Hutton, R. Fernandez *St George Hospital, Australia Journal of Hospital Infection (2024) 147, 32-39
背景
COVID-19 パンデミックは、世界中の医療機関に前例のない困難をもたらした。個人防護具は、医療従事者および患者の保護に基本的な役割を果たしているが、パンデミック中の院内感染症(HAI)を減少させる効果については依然として議論の的となっている。
目的
前後比較法を用いて、HAI の有病率に関する利用可能な最良のエビデンスを統合し、メタアナリシスを実施した。
方法
3 段階の検索法を実施し、公表された研究と未公表の研究を探した。検索は MEDLINE、CINAHL、Embase、PsycINFO および Google Scholar で行った。4 名の独立したレビュアーが、研究のスクリーニング、データ抽出および批判的評価を実施した。メタアナリシスは Review Manager を用いて実施した。本レビューは、システマティックレビューに関する PRISMA および Joanna Briggs Institute(JBI)ガイドラインに従って報告する。
結果
15 件の研究を本レビューの対象とした。3 件において、COVID-19 前の期間と比較して、COVID-19 期間に培養陽性数の統計学的有意な増加が示された。統合データにより、COVID-19 期間には COVID-19 前の期間と比較して、培養陽性患者数が非有意ではあったが減少したことが示された。呼吸器感染症の有意な減少を除いて、様々な細菌感染症に有意差は認められなかった。中心ライン関連血流感染症(CLABSI)に関する統合データでは、COVID-19 期間中の有意な増加が示されたが、1 件の研究では CLABSI 発症率の上昇が報告された。
結論
本レビューのエビデンスは、COVID-19 パンデミック予防策が HAI に及ぼす影響は様々であったことを示している。
監訳者コメント:
パンデミックによる感染予防策の効果を全体論として論じることは極めて難しい。それぞれの国、地域、病院のコロナ患者の発生状況、受入状況が千差万別であり、一定の条件を揃えることが困難である。また、厳しい感染対策を長期間継続することは費用面のみならず、現場の職員にも大きな肉体的および精神的な負担に加え、患者ケアの質や量にも影響が及ぶ。当初の厳格な感染対策は、COVID-19 の病態の解明とともに段階的に軽減されてきているが、未だに感染力は強く、本論文で指摘されたような様々な影響が確認されており、今後様々なサーベイランスを通じて患者ケアへの影響を監視してゆく必要がある。
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