熱傷 ICU における多剤耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)のアウトブレイクと、多面的な封じ込め措置によるその制御★★

2024.04.06

An outbreak of multi-drug-resistant Acinetobacter baumannii on a burns ICU and its control with multi-faceted containment measures

T. Obenhuber*, T.C. Scheier, T. Stutz, M. Hug, D. Fontein, A. Kaiser, S. Schoene, P. Steiger, S.D. Brugger, W. Zingg, P.W. Schreiber
*University Hospital Zurich and University of Zurich, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2024) 146, 102-108


背景

熱傷センターの患者は、皮膚バリアの低下と長期の入院のために、多剤耐性病原体(MDRO)に感染するリスクが高い。

方法

この研究は、熱傷センターにおける 多剤耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)(MDRAb)のアウトブレイクの調査と制御について報告する。アウトブレイク中にセンターに入院した 27 例の患者は、定期的にスクリーニングされた。また、感染源の可能性があるところを特定するために、合計で 132 個の環境検体が分析された。アウトブレイクの株の特徴を明らかにするのに、フーリエ変換赤外(FT-IR)分光法と Multilocus sequence typing(MLST)解析を使った。

結果

2022 年の 8 月から 11 月の間に、このアウトブレイクで、8 例の患者が罹患した。感染が 11 件あり、関係している可能性のある致死的転帰が 3 件あった。学際的で多職種から成るアウトブレイクチームが、繰り返す入院の中止*、隔離予防策、患者のスクリーニング、清掃と消毒の強化、職員の教育のバンドル戦略を実施した。FT-IR 分光法では、アウトブレイクが、MDRAb の罹患率が高い国から 1 か月前に送還された患者から始まったことが示唆された。環境サンプリングでは、共通の感染源は特定されなかった。アウトブレイク株の感染は、2a 以上の熱傷病変のある体表面積の割合の上昇と関連し(パーセント当たりの増加:オッズ比[OR]1.05、95%信頼区間[CI]0.99 ~ 1.12、P = 0.09)、患者に対する看護師の割合の上昇と逆に関連していた(0.1 当たりの増加:OR 0.34、95%CI 0.10 ~ 1.12、P = 0.06)。

結論

熱傷患者は、2a 以上の熱傷病変のある体表面積の割合が高いほど、MDROの定着と感染のリスクが高く、特に仕事量の多い期間に高い。多面的な封じ込め戦略により、熱傷センターにおける MDR Abによるアウトブレイクをうまく制御することができる。
*(監訳者注:普段通りに繰り返して行われる入院は中止にしたという意味。実際には熱傷以外の患者の新規入院は中止にしている。)

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

熱傷患者は皮膚のバリアが破綻しており、多剤耐性菌が定着しやすく、感染のリスクが高い。こうしたことから熱傷センターは多剤耐性菌を伝播させないために感染制御が非常に重要な部署である。一方、アシネトバクター属菌はグラム陰性菌であるものの乾燥した環境に長期間生息することができる。日本では MDRAb の分離は非常に少ないが、しばしば MDRAb 蔓延国で医療を受けた患者からの医療機関への持ち込みで、アウトブレイクをおこす。その封じ込めには紫外線照射や蒸発化過酸化水素などの消毒の強化を含む集学的な対策が必要になる。海外との往来が回復してきた現在、読んでほしい論文である。

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