日本の 3 次ケア病院における MRSA による整形外科の手術部位感染症に対して除菌および手指衛生などの感染制御策が及ぼす影響

2024.04.06

Impact of control measures including decolonization and hand hygiene for orthopaedic surgical site infection caused by MRSA at a Japanese tertiary-care hospital

H. Kawamura*, N. Imuta, T. Ooka, A. Shigemi, M. Nakamura, K. Mougi, Y. Obama, R. Fukuyama, S. Arimura, N. Murata, H. Tominaga, H. Sasaki, S. Nagano, N. Taniguchi, J. Nishi
*Kagoshima University Hospital, Japan

Journal of Hospital Infection (2024) 146, 151-159

背景

整形外科の手術部位感染症(SSI)において、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus[MRSA])はもっとも多い病原体である。しかし、MRSA による整形外科 のSSI 伝播の経過を調査した研究は少ない。

目的

疫学的解析および分子解析により、MRSA による整形外科の SSI 伝播の経過を調査することと、院内における整形外科の手術における MRSA-SSI の予防法を明らかにすること。

方法

当施設において、積極的 MRSA サーベイランス、術前除菌、MRSA 陽性症例に対する接触予防策を実施した。流行株の変化を調査し、日本の 3 次ケア病院の整形外科病棟の患者からの伝播の可能性について、保存した MRSA 株の遺伝子タイピング法により評価した。さらに、2005 年から 2022 年までの MRSAによるSSI 有病率のデータ、MRSA の保菌、およびアルコール消毒薬の使用(mL/患者日)を後向きに評価した。

結果

MRSAによるSSI 群の SCCmec type II 株は経時的に減少し、アウトブレイクの減少と関連した。感染症発生率が高い期間でも、MRSA 鼻腔保菌者からの伝播による SSI 症例は特定されなかった。感染症発生率は、アルコール消毒薬の使用と負の相関を示した(r =−0.82、P < 0.0001)。MRSAの鼻腔保菌者 5 例のうち 2 例は、鼻腔保菌と関連する菌株とは異なる菌株に起因する MRSA-SSI を発症した。

結論

病院のリザーバーからの伝播に対する手指衛生の厳守および保菌者の除菌などの感染制御策は、MRSA による整形外科の SSI の予防のために重要と思われる。しかし、除菌された鼻腔保菌者に対する接触予防策の必要性は低いであろう。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

日本の整形外科病棟の MRSA に特化した SSI の伝播様式についての解析事例である。一施設の解析に留まらずにさらに分析を進めることが期待される。

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