カンジダ・オーリス(Candida auris)の定着をスクリーニングするプロトコールの提案★★
Proposal for a screening protocol for Candida auris colonization S.E. Leonhard*, G.M. Chong, D.E. Foudraine, L.G.M. Bode, P. Croughs, S. Popping, E. Schaftenaar, C.H.W. Klaassen, J.A. Severin *Erasmus MC University Medical Center, The Netherlands Journal of Hospital Infection (2024) 146, 31-36
背景
カンジダ・オーリス(Candida auris)は新興の多剤耐性酵母様真菌で、入院患者に重度の感染を引き起こす可能性がある。2009 年に初めて検出されて以来、C. auris は全世界に広がっている。バイオフィルムを形成する能力があるために、患者に長期に亘って定着し、環境中に残存することから、病院においてこの病原菌を制御し除去するのは特に難しい。培養からC. auris を検出することは、他の酵母菌に形態が似ていること、成長が遅いこと、標準的な寒天培地と温度を使ったときの培養感度が低いことのために難しい。
目的
我々は、院内で開発したポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を、最適化した条件での培養による確認と組み合わせて使うことで、C. auris の定着をスクリーニングするプロトコールを開発した。
方法
内部転写スペーサー領域を標的とする C. auris 特異的なプライマーとプローブを開発し、特異性を BLAST ツールを使い in silico で確認した。PCR の妥当性は、C. auris の 12 の単離株と、22 の Candida 属菌の 103 の単離株から成るパネルを使って確認したが、100%正確であることが示された。検査の検出限界は、PCR 当たり約細胞 4 個であることが明らかになった。
結果
C. auris のスクリーニングは、2023 年 2 月 15 日に導入され、我々の病院に入院する前の 2 か月間、外国の医療施設に入院していた患者に対して使用された。スクリーニングのプロトコールには、鼻、喉、直腸、腋窩、鼠径部のスワブを含めた。最初の 8 か月間で、 199 例の患者がスクリーニングされ、7 例が陽性であることが明らかになった(4%)。
結論
我々の提案するスクリーニングのプロトコールは、病院における C. auris の制御に貢献する可能性がある。
監訳者コメント:
カンジダ・オーリスは 2009 年に日本で分離され、今や世界的に問題となっている真菌である。抗真菌薬に耐性傾向が強く、血流感染などの全身性感染症での致死率は30 ~ 60%と高率である。バイオフィルムを形成し患者への定着や病院環境での汚染が長期間持続し、感染拡大のリザーバーとなる。一旦感染が拡大すると感染制御が困難となることから、入院時スクリーニングが重要となる。菌種同定は最新データベースでの質量分析器では 100%の感度・特異度であるが、培養が必要なため入院時のスクリーニングには不適である。本論文ではリアルタイム PCR によるスクリーニングが有効であるとのことであるが、今後日本での拡大に備え、この真菌を正しく同定および薬剤感受性ができることが必要となる。なお、令和 5 年 5 月 1 日に厚労省事務連絡として、本菌の情報提供と依頼があるので詳細はこちらを参照のこと。(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001093562.pdf)
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