2020 年から 2022 年のノルウェーにおける病院下水を介した、エピデミックの原因となるOXA-244 カルバペネマーゼ産生大腸菌(Escherichia coli)ST38 の出現と拡散
Emergence and dissemination of epidemic-causing OXA-244 carbapenemase-producing Escherichia coli ST38 through hospital sewage in Norway, 2020–2022 D.H. Grevskott*, V. Radisic, F. Salvà-Serra, E.R.B. Moore, K.S. Akervold, M.P. Victor, N.P. Marathe *Institute of Marine Research (IMR), Norway Journal of Hospital Infection (2024) 145, 165-173
背景
集団ベースの下水サーベイランスは、病原体における抗菌薬耐性の存在率を検討するための有望なアプローチとして注目されつつある。
目的
ノルウェーのベルゲン市内にある下水処理施設 5 カ所の下水中におけるセフォタキシム耐性大腸菌(Escherichia coli)の一時的な流行を明らかにすること、また ESBL 産生およびカルバペネマーゼ産生大腸菌が、下水を介して受け入れ環境内で持続的に拡散しているか否かを明らかにすること。
方法
19 か月(2020 年 8 月から 2022 年 2 月)の期間にわたり、CHROMagar™ ECC プレートを用いて、サンプル 82 個からセフォタキシム耐性大腸菌計 569 株が分離され、Sensititre™ プレートを用いて抗菌薬感受性プロファイルを決定した。ドラフトゲノム配列を、Illumina MiSeq を用いたシーケンシングにより決定した。完全ゲノム配列は、Oxford Nanopore 社の技術を用いたシーケンシングにより決定した。
結果
流入排水(N = 461)および流出排水(N = 108)から得られた全 569 株が多剤耐性であった。配列決定を行った分離株のほとんど(61 株中 52 株)が、blaCTX-M-15(38.5%)および blaCTX-M-27(34.6%)を保有していた。ESBL 保有株で最も多く認められた配列型(ST)は、ST131(32.8%)および ST38(21.3%)であった。すべての CTX-M-27 保有 ST131 株は、クレード A または C1 に属していた一方、CTX-M-15 保有 ST131 株は、すべてのクレードに認められた。OXA-244 産生 ST38 株 5 株は、遺伝子型がノルウェー西部、フランスおよびオランダでエピデミックを引き起こした株と類似していたが、分離されたのは病院の下水を受ける処理施設の処理前および処理済みの下水からのみであった。
結論
本研究は、ノルウェーにおいて OXA-244 産生 ST38 クローンが下水を介して持続的に拡散していることを示した初の研究であり、病院の下水が受け入れ環境に達する OXA-244産生 ST38 クローンの発生源である可能性が示された。
監訳者コメント:
ノルウェーの下水サーベイランスにより、ESBL 保有株の特定のクローンが病院の下水を介して、拡散している可能性を示唆した報告である。
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