病棟間の入院患者の移動が大規模な院内 COVID-19 アウトブレイクを引き起こす(ウェールズ、2020年から 2022年):ルーチンサーベイランスと強化サーベイランスのデータを用いたマッチド症例対照研究

2024.03.31

Transferring inpatients between wards drives large nosocomial COVID-19 outbreaks, Wales, 2020–22: a matched case-control study using routine and enhanced surveillance data

R. Merrick*, C. McKerr, J. Song, K. Donnelly, R. Gerrard, M. Morgan, C. Williams, N. Craine
*UK Health Security Agency, UK

Journal of Hospital Infection (2024) 145, 1-10



背景

COVID-19 の伝播における病院環境の役割は不明である。

目的

病棟の特徴とアウトブレイクの規模との関連を評価し、緩和のための情報を得た。

方法

急性期病院 3 施設において大規模アウトブレイクが発生した病棟(症例病棟)と小規模アウトブレイクが発生した病棟(対照病棟)とを比較した。症例は、医療関連 COVID-19 の入院患者(入院後 8 日以上経過後にポリメラーゼ連鎖反応検査陽性)とした。症例病棟は、2020年 4月 1日から 2022年 4月 30日までの繰り返す 14 日間の期間内に 10 例以上の症例が認められた、成人内科/外科病棟とした。対照病棟は、症例数が 2 ~ 9例であった同等の病棟とした。人口統計学的データおよび臨床検査データを、ルーチンサーベイランスシステムから抽出した。連続データを 2 週間ごとに収集し、中央値に基づく二値変数として解析した。各症例病棟を、アウトブレイクの開始日(±14 日)をマッチさせた対照病棟 2棟と比較し、単変量および条件付き多変量ロジスティック回帰分析を用いて、オッズ比(OR)と 95%信頼区間(95%CI)を算出した。

結果

アウトブレイク 170 件(症例数中央値 5 例、四分位範囲 2 ~ 9 例)から、症例病棟 35棟が特定された。症例病棟では対照病棟と比較して、地域からの入院が少なかった(入院件数の中央値 5 対 10、それぞれ P < 0.01)一方、同じ病院内の病棟間移動が多かった(移動件数の中央値 58 対 29、それぞれ P < 0.01)。前の 2 週間の移動件数が多い病棟ほど、大規模なアウトブレイクが発生する可能性が有意に高かった(移動件数≧ 35 対 < 35の補正 OR 9.08、95%CI: 2.5 ~ 33)。

結論

疾患伝播の可能性を低下させるためには、医師に移動の理由を記録するよう求めることなどにより、患者の移動を安全に最小限に抑えることが推奨される。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

COVID-19 は罹患している患者自体はもちろん、患者のケアを行う医療従事者も巻き込まれて感染するリスクをはらんでいる。COVID-19 に罹患した患者と COVID-19 の患者に対応する医療従事者のどちらもが COVID-19 伝播のリスクを持っていると考えるべきである。

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*Mater Misericordiae University Hospital, Ireland

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