全ゲノムシークエンシングにより、四級アンモニウム化合物に対する耐性を有する緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の高リスク株 ST111 および ST235 による 長期にわたる 2 つの同時アウトブレイクが明らかに★

2024.03.31

Whole-genome sequencing reveals two prolonged simultaneous outbreaks involving Pseudomonas aeruginosa high-risk strains ST111 and ST235 with resistance to quaternary ammonium compounds

A. Rath*, B. Kieninger, J. Fritsch, A. Caplunik-Pratsch, S. Blaas, M. Ochmann, M. Pfeifer, J. Hartle, T. Holzmann, W. Schneider-Brachert
*University Hospital Regensburg, Germany

Journal of Hospital Infection (2024) 145, 155-164



目的

給排水システムは、しばしば緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)アウトブレイクの発生源となることが知られている。しかし、多くの古い建物では集中治療室(ICU)などの高リスク部門に依然として衛生設備が存在する。本研究では、呼吸器専門病院の ICU で検出され、全ゲノムシークエンシング(WGS)により制御された、多剤耐性緑膿菌(MDRP)による長期にわたる 2 つの同時アウトブレイクについて報告する。

方法

アウトブレイクの管理および調査は、患者 2 例で VIM-2 陽性 MDRP が検出された後、2019 年 8 月に開始された。調査として、4 か月にわたる患者に対しての週 1 回のスクリーニング、ならびに 15 か月にわたる広範な環境サンプリングを行った。すべての患者および環境分離株を収集し、WGS により解析した。

結果

2019 年 4 月から 9 月の間に、MDRP による院内感染症患者 10 例を同定し、これには VIM-2 陽性株 5 株が含まれた。VIM-2 陽性株は 9 つのシンク排水口、2 つのトイレ、および 1 個の清掃用バケツからも検出された。WGS により、VIM-2 陽性分離株 16 株中14 株が qacE または qacEΔ1 遺伝子を有するST111 であった一方、13 株はクラスターであることが示された(コアゲノム複数部位塩基配列タイピング[cgMLST]により、対立遺伝子の差異は 11 以下であることが示された)。OXA-2(2 つのトイレ)、および OXA-2、OXA-74、PER-1(2 例の患者、3 つのトイレ)を保有するqacEΔ1 陽性 ST235 分離株がVIM-2 陰性分離株では多かった。残りの緑膿菌株 7 株は、ST17、ST233、ST273、ST309 および ST446 であった。アウトブレイクの制御は、U 字型ベンドと清掃用バケツの交換、四級アンモニウム化合物の酸素放出消毒製剤への交換により達成された。

結論

高リスク株 ST111 および ST235 を含む MDRP により同時発生した 2 つのアウトブレイクの解明と管理は、異なるアウトブレイク発生源の株毎の同定による正確な制御によって、また全分離株における高品質四級アンモニウム化合物に対する耐性の in silico 検出によって可能となった。 *(監訳者注)in silico:コンピュータを使っての

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

全ゲノムシークエンシングにより、四級アンモニウム化合物に対する耐性を有する 2 種類の多剤耐性緑膿菌の長期間の同時アウトブレイクが明らかになり、U 字型ベンドと清掃用バケツの交換、四級アンモニウム化合物酸素放出消毒製剤への変更により、アウトブレイクの制御ができたという事例報告。給排水システムを介しての耐性グラム陰性桿菌のアウトブレイクはしばしば報告されているが、全ゲノムシークエンシングを用いることより、より正確な伝播の状況が把握できる。

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