オランダの新生児集中治療室における中心ライン関連血流感染症の負荷★
Central-line-associated bloodstream infection burden among Dutch neonatal intensive care units S.J. Jansen*, S.D.L. Broer, M.A.C. Hemels, D.H. Visser, T.A.J. Antonius, I.E. Heijting, K.A. Bergman, J.U.M. Termote, M.C. Hütten, J.P.F. van der Sluijs, E.J. d’Haens, R.F. Kornelisse, E. Lopriore, V. Bekker *Leiden University Medical Centre, The Netherlands Journal of Hospital Infection (2024) 144, 20-27
背景
疫学についての概観を明らかにすることは、感染予防構想を(将来)普及させるために必要となる有益な理解を提供する。
目的
オランダの新生児集中治療室(NICU)における中心ライン関連血流感染症(CLABSI)の全国の疫学を記述すること。
方法
2 年間のサーベイランス期間(2019 年から 2020 年)に、オランダの全部で 9 つの NICU に入室した妊娠 32 週未満および/または出生体重 1,500 g 未満で生まれた2,935 例の新生児からのデータを解析した。ベースライン特性のばらつき、1,000 中心ライン日当たりの CLABSI の発生率、病原体の種類、CLABSI ケアバンドルを評価した。CLABSI の有意な予測因子を特定するために、多変量ロジスティック混合モデリングによる解析を実施した。
結果
合計で 1,699 例(58%)の新生児が中心ラインを挿入され、160 件の CLABSI エピソードが記録された。全 CLABSI エピソードにおいて、最もよく見られた感染微生物は、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌であった(N = 100、63%)。参加したユニット間で、CLABSI の発生率にほぼ 6 倍の差が見つかった(1,000 ライン日当たり 2.91 ~ 16.14)。ロジスティック混合モデリングでは、中心ラインの留置時間が長いこと(補正オッズ比[aOR]1.08、P < 0.001)、臍帯ライン(aOR:1.85、P = 0.03)、個室(aOR:3.63、P = 0.02)が CLABSI の有意な予測因子であったことが明らかになった。バンドルの要素のばらつきには、静脈内チューブのケアや、抗菌薬の予防投与等があった。
結論
CLABSI は、依然として、オランダの早期産児においてよく見られる問題の 1 つで、施設間で発生率にかなりのばらつきがある。この疫学についての概観は、オランダにおける新生児の CLABSI の負荷について集められたデータでは最大規模であるので、継続的なサーベイランスを目的とした共同研究のプラットホームの開発に対してしっかりとした基礎を提供していて、理想的には、エビデンスに基づいた全国的なガイドラインの改善につながるだろう。今後は、集計された形の通常の患者データを、確実に、利用でき抽出できるようにすることに重点を置いて取り組むべきである。
監訳者コメント:
中心ラインは NICU に入室している児にとって重要な命綱ともいえるラインであるが、血流感染のリスクを常に抱えている。特に挿入期間、臍帯ライン、個室収容形式が感染の危険因子として同定されており、手指衛生の遵守やライン無菌的管理、抜去時期などの日常的な手順の良否が血流感染に大きく影響する。この論文では血流感染の発生率においてユニット間差が大きく、その原因としては人工呼吸器管理、経静脈栄養、先天性奇形などにより母集団となる児の違いによると考えられる。今後中心ラインに関する標準的なガイドラインの普及と系統的継続的なサーベイランスを実施することで更なる改善が期待される。
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