医療施設の乾燥表面バイオフィルムにおける細菌生存率:システマティックレビュー★

2024.02.29

Bacterial viability in dry-surface biofilms in healthcare facilities: a systematic review

A-J. Schapira*, M. Dramé, C. Olive, K. Marion-Sanchez
*CHU Martinique, Martinique

Journal of Hospital Infection (2024) 144, 94-110



背景

細菌は、バイオフィルムと呼ばれる構造物の中に住むことが知られている。標準的なバイオフィルムは、50 年超、広く研究されてきたが、乾燥表面バイオフィルムについてはほとんど分かっていない。2012 年以来、乾燥表面バイオフィルムについていくつかの科学論文で記述されているが、細菌の生存率や培養可能性についての基本的な知識は、依然として限られている。

目的

乾燥表面バイオフィルム内の細菌が、生存可能で、培養可能で、数えられるかどうかを明らかにするために、システマティックレビューを実施すること。

方法

適格な論文は、医療関連感染に関与する細菌種を少なくとも 1 つ含んだ乾燥表面バイオフィルムを扱っていなければならなかった。ここで、医療関連感染とは、実際の医療環境で発生したもの(in-situ)、またはバイオフィルムモデルに助けられて発生したもの(in-vitro)であった。

結果

24 報の論文をレビューに組み入れた。大部分の論文で、生菌が分離されていたが(in-situで 87%、in-vitro で 100%)、in-situ の研究で、バイオフィルム内の培養可能な細菌を単位面積当たりで定量したものはなかった。それとは対照的に、in-vitro の研究の 100%で、対照からの細菌を培養し、94.4%で、細菌数を数えている。培養可能な細菌は、清掃、消毒、滅菌のプロトコールを試みた後も、その 78%で増殖した。標本を生/死蛍光プローブ(Baclight®)で染色した後の顕微鏡下の観察では、培養陰性の標本で大量の生菌が見られた。

結論

我々の研究は、表面の微生物学的モニタリングの現在の方法の有効性について疑問を抱かせる。これらの方法は、細菌の培養可能性のみに基づいているからである。表面のモニタリングと、清掃・消毒のプロトコールの両方を改善するためには、生存可能だが培養可能ではない細菌をかなりの量含んでいるように見える乾燥表面バイオフィルムの概念を取り入れる必要がある。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント


バイオフィルムといえば一般的に湿潤環境で生成されると認識されてきたが、近年、乾燥した環境でもバイオフィルムが形成され、こういった乾燥表面バイオフィルムは通常の方法では培養されないが実際には死滅していない細菌を大量に含むとされる。ある程度文献が蓄積してきたところでのシステマティックレビューであり、環境表面の汚染や消毒に興味のある方は是非お読みいただきたい。

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