麻酔作業区域における黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)シークエンス型 5 の伝播の分子疫学的特徴を明らかにする★★

2024.01.31

Characterizing the molecular epidemiology of anaesthesia work area transmission of Staphylococcus aureus sequence type 5

R.W. Loftus*, C.T. Brindeiro, C.P. Loftus, J.R. Brown, J.E. Charnin, F. Dexter
*University of Iowa, USA

Journal of Hospital Infection (2024) 143, 186-194




背景

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)シークエンス型 5(ST5)は世界的な脅威になりつつある。

目的

麻酔作業区域における ST5 の伝播の疫学的特徴を明らかにすること。

方法

この後向きコホート研究では、麻酔作業区域におけるリザーバが関与し、予防投与の抗菌薬に耐性で、伝播の見られた黄色ブドウ球菌分離株を解析した。全ゲノム解析を使い、ST5 の伝播の疫学的特徴を、感染源となったリザーバ、伝播の場所、侵入門戸、伝播の方法ごとに明らかにした。手術部位感染症(SSI)の発生に関して、全患者を少なくとも 30 日間追跡調査した。

結果

分離株の 41%(18/44、95%信頼区間:28 ~ 56%)が ST5 であった。感染源となったリザーバーが医療提供者の手であったのは、伝播の見られた ST5 で 28%(5/18)であったが、その他の ST では 4%(1/26)であった。伝播の場所が医療提供者の手であったのは、ST5 では 28%(5/18)であったが、その他の ST では 7%(2/26)であった。活栓のコンタミネーションが ST5 の分離株の 8%(1/13)で起こり、その他の ST では 12%(3/25)であった。手術日が異なる症例間で起こった伝播イベントの 63%に ST5 が関わっていた。ST5 は、耐性の特徴を持っている可能性が高く(中央値[四分位範囲]は、ST 5が 3[2 ~ 3]、その他の ST が 2(1 ~ 2)、P < 0.001)、セファゾリン、ピペラシリン–タゾバクタム、および/またはシプロフロキサシンに対する耐性が強かった(ST5 が 3[2~3]、その他の ST が 2(1 ~ 3)、P = 0.02)。ST5 は、6 件の SSI のうち 3 件と関連していた。

結論

ST5 は、麻酔作業区域において、予防投与の抗菌薬に耐性で、伝播の見られた分離株のなかによく見られた。伝播には医療提供者の手が関与し、1 人の患者から、後日、別の患者へ伝播する。ST5 は、術中のその他のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌よりも、多くの薬剤耐性因子、および試験管内での感受性の減少と関連していた。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント


本研究は、MRSA の分子疫学研究の重要性を示した。ST5 の動向を注視しながら、医療関連感染対策を考える必要がある。

同カテゴリの記事

2022.06.16
Risk of SARS-CoV-2 transmission upon return to work in RNA-positive healthcare workers

L.M. Kolodziej*, S. Hordijk, J. Koopsen, J.J. Maas, H.T. Thung, I.J.B. Spijkerman, M. Jonges, M.K. Bomers, J.J. Sikkens, M.D. de Jong, R. Zonneveld, J. Schinkel
*University of Amsterdam, the Netherlands

Journal of Hospital Infection (2022) 124, 72-78


2021.07.31
Burden of healthcare-associated infections in Italy: incidence, attributable mortality and disability-adjusted life years (DALYs) from a nationwide study, 2016

V. Bordino*, C. Vicentini, A. D’Ambrosio, F. Quattrocolo, Collaborating Group, C.M. Zotti
*University of Turin, Italy

Journal of Hospital Infection (2021) 113, 164-171


2021.09.30
Healthcare workers acquired COVID-19 disease from patients? An investigation by phylogenomics

R.C.W. Wong*, M.K.P. Lee, G.K.H. Siu, L.K. Lee, J.S.L. Leung, E.C.M. Leung, Y.I.I. Ho, R.W.M. Lai
*Prince of Wales Hospital, China

Journal of Hospital Infection (2021) 115, 59-63


2024.06.30
Short versus prolonged duration of therapy for Pseudomonas aeruginosa bacteraemia: a systematic review and meta-analysis

N. Ranganath*, L.C. Hassett, O.M.A. Saleh, Z.A. Yetmar
*Mayo Clinic, USA

Journal of Hospital Infection (2024) 148, 155-166






2022.11.12
Differences in strategies for prevention of COVID-19 transmission in hospitals: nationwide survey results from the Republic of Korea

W. Jang*, B. Kim, E.S. Kim, K-H. Song, S.M. Moon, M.J. Lee, J.Y. Park, J-Y. Kim, M.J. Shin, H. Lee, H.B. Kim
*Hanyang University College of Medicine, Republic of Korea

Journal of Hospital Infection (2022) 129, 22-30


JHIサマリー日本語版サイトについて
JHIサマリー日本語版監訳者プロフィール
日本環境感染学会関連用語英和対照表

サイト内検索

レーティング

アーカイブ