再利用可能な手術器具の再処理に用いるロボットの除染

2024.01.31

Decontamination of a robot used to reprocess reusable surgical instruments

J. Heibeyn*, M. Witte, K. Radermacher
*RWTH Aachen University, Germany

Journal of Hospital Infection (2024) 143, 1-7



背景

中央材料室の除染区域での医療器具の取り扱いにロボットを用いることで、リスクを低減し、人員不足に対処することが可能である。グリッパーの設計は、バイオフィルムの形成や異なる器具用トレイ間の交差汚染の可能性を回避するために、標準的な中央材料室手順を用いた確実な洗浄が可能であり、かつグリッパーの機能を実現するものでなければならない。本研究では、ロボットのグリッパーの設計を洗浄可能性の点から検討し、8 時間の作業シフトで長時間の乾燥後でも、有効な洗浄を達成できるかどうかを調べる。

方法

グリッパーの洗浄可能性を最適化し、これを用いて、異なる動作形態に応じて様々な試験用汚染物質の拡散を評価した。続いて、試験用汚染物質としてヒツジの血液を用いて洗浄可能性を解析し、4 および 8 時間の乾燥後に異なる組立構成でグリッパーを再処理し、残留蛋白質を測定した。

結果

実験に基づき、グリッパー構成部品の動作形態に応じた汚染物質の拡散を記録した。ヒツジの血液は、試験用汚染物質の中で拡散性が最も高く、薄い間隙から透過した。重要なことに、乾燥時間およびグリッパーの分解か洗浄ポジションかを問わず、すべての試料で認められた残留蛋白質の濃度は警告閾値より低かった。装置別に最適化されたポジションで洗浄することにより、分解した各構成部品を洗浄した場合と同等の結果が得られた。

結論

これらの結果から、1 回の作業シフトである 8 時間の後でも、労力を要するグリッパーの分解を行うことなく、洗浄を実行できることが示されており、中央材料室の除染区域における汚染された医療器具の取扱いに、将来的にロボットを用いることが支持される。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント


筆者らは、手術に使用する器具の洗浄を目的としたロボットの器具を把持する部分(グリッパー)の開発を行った。十二指腸内視鏡でも問題になったが、複雑な構造は効果的な洗浄や消毒の障壁になる。グリッパーは複雑な部品で構成されており、それ自体の洗浄や消毒には分解作業が必要となる。洗浄消毒機器自体の汚染はしばしば見落とされがちであり、注意が必要である。


同カテゴリの記事

2008.06.30

Field test comparison of two dermal tolerance assessment methods of hand hygiene products

2014.01.30

In vivo comparative efficacy of three surgical hand preparation agents in reducing bacterial count

2012.04.29

Laboratory-acquired brucellosis in Turkey

2015.08.31

Effectiveness of contact precautions against multidrug-resistant organism transmission in acute care: a systematic review of the literature

2012.02.28

Comparison of cleaning efficacy between in-use disinfectant and electrolysed water in an English residential care home