南ドイツの 3 次大学病院における新たなバンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)株 ST1299/CT1903/vanA の出現について
Concerning emergence of a new vancomycin-resistant Enterococcus faecium strain ST1299/CT1903/vanA at a tertiary university centre in South Germany A. Rath*, B. Kieninger, A. Caplunik-Pratsch, J. Fritsch, N. Mirzaliyeva, T. Holzmann, J.K. Bender, G. Werner, W. Schneider-Brachert *University Hospital Regensburg, Germany Journal of Hospital Infection (2024) 143, 25-32
背景
従来、ドイツでは、配列タイプ 80(ST80)および ST117のvanB を有するバンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)(VREfm)が優勢である。当院では 2020 年に、vanA 陽性 VREfm の割合の急激な上昇を経験した。
目的
全ゲノムシークエンシング(WGS)および院内伝播の解析により、これらのダイナミクスを理解することを試みること。
方法
当院で 2020 年に治療を受けた患者ごとの最初の VREfm 分離株を、特異的 vanA/vanB PCR、WGS、複数部位塩基配列タイピング(MLST)およびコアゲノム(cg)MLST によって後向きに解析した。病院稼働率データを用いて、VRE 陽性患者間の疫学的関連を検討した。
結果
VREfm 患者 356 例中 319 例から得た分離株を WGS に用い、このうち 181 例(56.7%)が ECDC(欧州疾病管理予防センター)の院内伝播の定義を満たした。院内発症例の負荷が高いことは、全体として高いクローナリティ率に反映されており、優勢な配列タイプ(ST)および複合体タイプ(CT)はそれぞれ、新たに出現した株 ST1299(100% vanA、77.4% CT1903)と、よく知られた ST80(90.0% vanB、81.0% CT1065)および ST117(78.0% vanB、65.0% CT71)の3つのみであった。ST1299 分離株全体、特にサブタイプ CT1903 では、分離株のクローナリティが高く、きわめて高い伝播能を示す。全体で、分離株 319 株中 152 株は、cgMLST 解析における別の分離株とのアレル差が 3 アレル以下で、このうち 91 株(59.6%)が ST1299 であった。稼働率データにより、診断前 30 日以内の共通の病室(3.7%)、共通の診療科(6.2%)および前の病室使用者の VRE 保菌(0.6%)が、強固な疫学的関連として特定された。
結論
新たに出現した VREfm クローンである ST1299/CT1903/vanA が、2020 年に当院で優勢となり、VREfm の割合を上昇させる重要な因子となっている。
監訳者コメント:
ドイツにおける新たな VRE 流行クローンの報告。日本では今のところ報告はないが、注意が必要である。同室、同一診療科、以前の同室利用者、といった危険因子についても参考にはなるが、もう少し掘り下げた評価が欲しいところ。
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