入院患者におけるステロイドの累積投与量と COVID-19 関連肺アスペルギルス症★★

2023.12.31

Cumulative steroid dose in hospitalized patients and COVID-19-associated pulmonary aspergillosis

D. Ramonfaur*, J.N. Salto-Quintana, G.M. Aguirre-García, N.M. Hernández-Mata, H. Villanueva-Lozano, G. Torre-Amione, M.F. Martínez-Reséndez
*Harvard Medical School, USA

Journal of Hospital Infection (2023) 142, 26-31



背景

重度の COVID-19 は、過免疫反応を引き起し、それにはステロイドで対応できることが多いが、今度はステロイドが日和見感染のリスクを増加させる。COVID-19 関連肺アスペルギルス症は、免疫調節療法と関連があることが知られている合併症の1つである。COVID-19 関連肺アスペルギルス症の発症におけるステロイドの累積投与量の役割ははっきりしていない。この研究では、COVID-19 肺炎で入院した患者へのステロイドの累積投与量とCOVID-19 関連肺アスペルギルス症のリスクとの関係を評価した。

方法

この後向きコホート研究には、メキシコ北部の 3 次医療施設の PCR で確認されたCOVID-19 肺炎患者 135 例を組み入れている。COVID-19 関連肺アスペルギルス症を発症した患者は、対照を 2020 ECMM/ISHAM 基準に従って定義され分類された可能性例、臨床診断例、確定診断例の COVID-19 関連肺アスペルギルス症を発症しなかった COVID-19 肺炎患者とし、1:2 の割合で年齢および性別によってマッチさせた。入院から死亡、退院、COVID-19 関連肺アスペルギルス症の診断のどれかが起こるまでのステロイドのデキサメタゾン相当量に換算した累積投与量を得た。連続変数であるステロイドの累積投与量による COVID-19 関連肺アスペルギルス症のリスクを、ロジスティック回帰モデルを使い評価した。

結果

45 例の患者が COVID-19 関連肺アスペルギルス症と診断され、それらを、90 例の対照とマッチさせた。平均年齢は 61 ± 14 歳で、72%が男性であった。ステロイドの累積投与量の平均は、COVID-19 関連肺アスペルギルス症のなかった患者が 66 ± 75 mg、COVID-19 関連肺アスペルギルス症のあった患者が 195 ± 226 mg であった(P < 0.001)。COVID-19 関連肺アスペルギルス症のリスクは、ステロイドの累積投与量が増えると増加した(OR 1.0075、95%CI:1.0033 ~ 1.0116)。

結論

COVID-19 関連肺アスペルギルス症を発症した患者の方が、入院中のステロイド投与歴で累積投与量が多かった。COVID-19 関連肺アスペルギルス症のリスクは、デキサメタゾンを 10 mg 使用するごとに約 8%増加する。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント


COVID-19 感染後のサイトカインストームによる過剰免疫反応を制御するために、ステロイド(ここではデキサメタゾン)が投与される。その後に発症する COVID-19 関連肺アスペルギルス症(CAPA)の発生はステロイドの累積投与量と直線的に相関しており、別の報告では投与期間が 10 日間を超えると CAPA の合併率が上昇するとのことで、短期間で必要最小限の投与量での治療が望ましい。本研究での CAPA 合併率は 2.1%で、ちなみに日本呼吸器学会が実施したアンケート調査(2021 年 2 月)では人工呼吸管理の必要な重篤患者での CAPA の発生率は 0.54%(9 例/1,664 例)であった。

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