高所得環境における成人心臓手術患者に対する手術部位感染症サーベイランスのための障害と促進因子:徹底的な探索★
Barriers and facilitators for surgical site infection surveillance for adult cardiac surgery in a high-income setting: an in-depth exploration J. Tanner*, L. Brierley Jones, M. Rochon, N. Westwood, C. Wloch, R. Vaja, L. Rogers, J. Dearling, K. Wilson, R. Magboo, H. Aujla, S. Page, P. Whiting, G. Murphy, C. Brown, T. Lamagni, P. Harrington *University of Nottingham, UK Journal of Hospital Infection (2023) 141, 112-118
背景
手術部位感染症(SSI)サーベイランスは、感染症発生率の同定、ベンチマーキング、臨床的レビューの促進および感染制御策の実施を通して SSI の減少を促進することを目的としている。しかし、サーベイランスへの参加の仕方は様々であり、幅広い採用を改善する機会が存在することが示唆される。
目的
欧州の高所得環境における SSI サーベイランスにおける障害と促進因子について徹底的な理解を得ること。
方法
イングランドの心臓専門病院 9 施設のサーベイランススタッフ、感染予防スタッフ、看護師および外科医 16 名を重要情報提供者とした面接。データをテーマに基づいて分析した。
結果
SSI サーベイランスは、資源集約的であると報告された。サーベイランスにおける障害には、データ収集に関連する課題として以下が含まれた:データが多数の場所に所在すること、SSI データの報告方式が複数あること、分母データを探し出すのが難しいこと、コンピューターシステム間のインターフェイスが存在しないこと、データ収集方法が「労働集約的」または「時代遅れ」であること(例、患者質問票に郵便システムを使用する)。報告されたさらなる懸念には以下が含まれた:定義の妥当性、データ報告方法にばらつきが認められること、外科医の関与がないこと、支援しようとしない管理者、スタッフにおける SSI の優先度の低さ、ならびに高い SSI 発生率をめぐる「失敗を責める文化(blame culture)」。促進因子は以下のものであった:資源の増加、デジタル技術の適切な使用(例、創傷のリモートデジタルモニタリング)、日常臨床作業の中へのサーベイランスの組み込み、優秀なスタッフを育てること、サーベイランスの義務化、サーベイランスと患者アウトカム改善との関係を密接にすること、退院後サーベイランスにより焦点を当てること、プライマリケアデータとの統合。
結論
「第一線の」スタッフとの新たな面接を行うことで、SSI サーベイランスへの参加を改善する機会が明らかにされた。これらの知見を行動に移すことで、サーベイランス活動が高まり、患者安全のベネフィットをより多くの外科患者集団にもたらすことになろう。
監訳者コメント:
心臓外科術後の SSI サーベイランス実施における促進因子と阻害因子を報告した論文である。本研究結果は、日本の医療機関においても参考になると思われる。
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