新生児集中治療室のオープンベイから個室への移行が多剤耐性腸内細菌目細菌の病院での伝播に与える影響
Influence of transition from open bay units to single room units in a neonatal intensive care unit on hospital transmission of multi-drug-resistant Enterobacterales A. van der Hoeven*, S.J. Jansen, M. Kraakman, V. Bekker, K.E. Veldkamp, S.A. Boers, E. Wessels, M.T. van der Beek *Leiden University Medical Centre, The Netherlands Journal of Hospital Infection (2023) 141, 3-8
背景
病院の新生児集中治療室(NICU)のデザインをオープンベイから個室に変えることは、グラム陰性多剤耐性病原体(MDRO)の定着率の減少と関連しないことが、以前に示された。したがって、定着は、主に垂直に、あるいは親と医療従事者を介して起こり、環境要因を介してではないという仮説と、個室への移行は、疫学的につながりのある MDRO のクラスターの数を減少させないだろうという仮説が立てられた。これを調べるために、研究病院の乳児から培養された MDRO に対してコアゲノム multi-locus sequence typing(cgMLST)を適用した。
方法
この後向きコホート研究には、3 次医療の大学病院の NICU に、2017 年 5 月のオープンベイから個室への移行の 2 年前と、移行から 1.5 年後(2018 年から 2020 年)に入院し、MDRO を保菌していた乳児全員を組み入れた。
結果
合計で 55 例の乳児が MDRO の保菌者と診断された。cgMLST のための分離株は 49 例の乳児から得られた。オープンベイの期間に、20 例の乳児のうち 4 例(20%)を巻き込んだ 1 つのクラスターが特定され、個室の期間に、29 例の乳児のうち 9 例(31%)を巻き込んだ 4 つのクラスターが特定された。個室の MDRO の 4 つのクラスターすべてを疫学的に結び付けることが可能であったが、これは、オープンベイのクラスターについては可能でなかった。後者の例では、病棟の環境中の感染源からの伝播の可能性が高いと思われる。
結果
個室への移行後、疫学的に結び付いた MDRO のクラスターの数の減少はなかった。これは、乳児を個室のデザインの NICU で看護すること自体は、MDRO の獲得に対する防御にはならないことを示唆している。
監訳者コメント:
NICU において個室管理は多剤耐性腸内細菌目細菌のアウトブレイクの発生率を低下させなかった。一つの仮説としては、多剤耐性腸内細菌目細菌の主な感染経路は垂直感染(母胎からの感染)が考えられるとしている。多剤耐性腸内細菌目細菌の保菌率や部屋管理以外の感染対策遵守状況は国によっても異なり、日本においても同様と考えるのは時期尚早だろう。
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