廃水に基づく疫学によるカタールの COVID-19 隔離病院における細菌多様性および抗菌薬耐性の追跡

2023.11.30

Wastewater-based epidemiology for tracking bacterial diversity and antibiotic resistance in COVID-19 isolation hospitals in Qatar

A.A. Johar*, M.A. Salih, H.A. Abdelrahman, H. Al Mana, H.A. Hadi, N.O. Eltai
*Barzan Holdings, Qatar

Journal of Hospital Infection (2023) 141, 209-220




背景

病院は抗菌薬耐性遺伝子のホットスポットであり、それらの出現と伝播に重要な役割を果たす。多数の抗菌薬耐性遺伝子が、廃水システムを介して病院から排出される。廃水に基づく疫学は、リアルタイムの情報を提供するための手段として強化されており、地域レベルでの細菌および抗菌薬耐性遺伝子の保有率を理解するための有望な方法である。

目的

パンデミック中に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)隔離病院から得た病院廃水病原菌において、細菌多様性の検討および抗菌薬耐性遺伝子プロファイルの同定を行い、非 COVID-19 施設の結果と比較した。

方法

COVID-19 患者指定病院 3 施設と非 COVID-19 患者指定病院 1 施設の計 4 施設から、廃水検体を入手した。細菌 DNA 定量的ポリメラーゼ連鎖反応を用いて、細菌多様性と抗菌薬耐性遺伝子を調べた。

結果

分析により、検体中に以下の門に属する 27 の異なる細菌種が記録された。フィルミクテス門(Firmicutes、44.4%)、プロテオバクテリア門(Proteobacteria、33.3%)、放線菌門(Actinobacteria、11%)、バクテロイデス門(Bacteroidetes、7.4%)、ウェルコミクロビウム門(Verrucomicrobiota、3.7%)。さらに、全体で 61 の 抗菌薬耐性遺伝子 が検出された。最も多数の抗菌薬耐性遺伝子が認められたのは Hazem Mebaireek General Hospita の COVID-19 患者区域(88.5%)であり、抗菌薬耐性遺伝子数が最も少なかったのは Hazem Mebaireek General Hospital の非患者区域(24.1%)であった。

結論

抗菌薬耐性遺伝子や高い病原菌レベルなどの、下水中の汚染物質の出現は、公衆衛生および水界生態系に対する潜在的リスクとなる。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント


細菌 DNA 定量的ポリメラーゼ連鎖反応を用いて、抗菌薬耐性遺伝子や高い病原菌レベルなどの情報を丹念に知ることは、疫学情報として今後役に立つことであろう。長期間その薬剤耐性遺伝子の検出頻度などをサーベイランスすることで、感染症の実態が明らかとなるであろう。

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