人工ヒト汗条件下で成長させた多剤耐性乾燥表面バイオフィルムに対する病院消毒薬のモデル化

2023.11.30

Modelling hospital disinfectant against multi-drug-resistant dry surface biofilms grown under artificial human sweat

F. Watson*, S. Wilks, C.W. Keevil, J. Chewins
*University of Southampton, UK

Journal of Hospital Infection (2023) 141, 190-197



背景

乾燥表面バイオフィルムは、集中治療室内の病院表面のいたるところに豊富に存在する。院内病原菌が病原性を維持し、表面に長期間存続できる仕組みは、乾燥表面バイオフィルムによって説明される可能性がある。消毒薬製品の性能を規定する試験基準では、通常の増殖条件下での浮遊性細菌モデルが採用されているが、これは対応するバイオフィルムモデルと比較して耐性が低いことが知られている。

目的

接触表面上の栄養供給源と予測される人工ヒト汗のもとで培養したバイオフィルムモデルを評価し、四級アンモニウム、過酸化水素、活性塩素などの一般的な洗浄剤の抗菌性能を調べた。

方法

アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)などの病原性細菌を用いた 5 種類の単一種バイオフィルムを、人工ヒト汗条件下および富栄養条件下で沈殿プロトコールを用いてステンレス鋼基板の上に作成し、表現型耐性を直接比較した。バイオフィルムモデルを 5 日間成長させ、乾燥サイクルを行った後、消毒薬溶液に最大 25 分間浸した。LIVE/DEAD™ 染色を用いた落射蛍光顕微鏡法により、微小コロニーの生存率を可視化した。

結果

結果から、人工ヒト汗条件下で培養されたバイオフィルムは、通常の培地で培養した場合と比較して、抗菌薬耐性が高く、すべての洗浄剤で殺菌速度が低下することが明らかになった(平均減少率はそれぞれ 72.4%対 96.9%)。落射蛍光顕微鏡法により、消毒後のすべてのクーポンで微量の生菌が認められ、再増殖および再汚染の潜在的機会が示された。

結論

2 つの成長条件の間で殺菌性能に顕著な差が認められたことから、現在の抗菌薬試験基準の中の潜在的な落とし穴が明らかになるとともに、細菌負荷の正確な表示の重要性が強調される。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント


「人工ヒト汗」条件下で培養されたバイオフィルムにより殺菌性能に顕著な差が認められたことは、非常に興味深い。この効果が得られるのは特定の条件に合った場合に限られる可能性があるので注意を要する。

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