バンコマイシン耐性腸球菌の疫学と転帰:システマティックレビューおよびメタアナリシス

2023.11.30

Epidemiology and outcomes of vancomycin-resistant enterococcus infections: a systematic review and meta-analysis

V.M. Eichel*, K. Last, C. Brühwasser, H. von Baum, M. Dettenkofer, T. Götting, H. Grundmann, H. Güldenhöven, J. Liese, M. Martin, C. Papan, C. Sadaghiani, C. Wendt, G. Werner, N.T. Mutters
*Heidelberg University Hospital, Germany

Journal of Hospital Infection (2023) 141, 119-128



バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)は、医療施設でたくさんの感染を引き起こす。しかし、VRE 感染についての疫学と負荷に関する知識は依然として断片的である。我々は、世界中の病院、長期ケア施設(LTCF)、老人ホームにおける VRE の疫学と転帰についての最近の研究を、現時点における疫学的報告に基づいてまとめることを目的とした。入院患者における VRE フェシウム(faecium)およびフェカーリス(faecalis)感染について報告し、2014 年 1 月から 2020 年 12 月までに発表された観察研究について、MEDLINE/PubMed、Cochrane Library、Web of Science を検索した。転帰は、発生率、感染率、死亡率、入院期間(LOS)、医療費とした。死亡率についてメタアナリシスを実施した(PROSPERO登録番号、CRD42020146389)。特定した 681 報の論文のうち、57 件の研究を解析に組み入れた。エビデンスの全体的な質は、中等度から低であった。VRE の発生率が報告されることは稀で、異質性が見られた。VRE 感染率は大きく異なった(1 ~ 55%)。メタアナリシスでは、VRE faecium の血流感染(BSI)の死亡率が、バンコマイシン感受性腸球菌faecium の BSI と比べて高いことが明らかになった(リスク比[RR 1.46]、95%信頼区間[CI]1.17~1.82)。VRE faecium の BSI と VRE faecalis の BSI を比べたとき、差は観察されなかった(RR 1.00、95%CI 0.52~1.93)。LOSは、E. faecium の引き起こした BSI の方が、E. faecalis の引き起こした BSI より長かった。医療費を報告していたのは 3 件の研究のみであった。これまでの研究結果とは対照的に、組み入れた研究についての我々のメタアナリシスは、バンコマイシン耐性が、VRE の種とは独立して、死亡率の上昇と関連している可能性を示している。我々は、転帰を報告する際の標準化、医療費に関する情報、最先端の微生物学的種同定法が不足していることを突き止めた。これは、これからの研究の立ち上げや報告に影響を与えるかもしれない。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント


日本でも増えてきた VRE 感染症の疫学とアウトカムに関するシステマティックレビューおよびメタアナリシス。E. faecium による菌血症においてはバンコマイシン耐性株の方がバンコマイシン感性株よりも予後が悪かった。

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