全ゲノムシークエンシングによる急性期医療環境での SARS-CoV-2 伝播の調査:システマティックレビュー

2023.10.31

Whole-genome sequencing to investigate transmission of SARS-CoV-2 in the acute healthcare setting: a systematic review

D. Hare*, K.M. Dembicka, C. Brennan, C. Campbell, U. Sutton-Fitzpatrick, P.J. Stapleton, C.F. De Gascun, C.P. Dunne
*University College Dublin, Ireland

Journal of Hospital Infection (2023) 140, 139-155


背景

全ゲノムシークエンシング(WGS)は、急性期医療環境での SARS-CoV-2 伝播を明らかにし、感染予防・制御(IPC)対応の指針を得るために広く用いられている。

目的

2020年 1月 1日から 2022年 6月 30日までに公表された、急性期医療環境における SARS-CoV-2 の院内伝播を明らかにするための WGS 実施を報告した、入手可能な文献を系統的に評価した。

方法

PubMed、Embase、Ovid MEDLINE、EBSCO MEDLINE および Cochrane Library のデータベースを検索し、急性期医療環境における SARS-CoV-2 伝播を調査するための WGS の使用について英語で報告した研究を特定した。文献には 2021 年 12 月 31 日までに収集されたデータが含まれ、結果は PRISMA(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses)声明に従って報告された。

結果

全体で、重複のない 3,088 件の記録が検索された。97 件が組み入れ基準を満たし、うち 62件がアウトブレイク解析、35 件がゲノム調査研究であった。低所得国から公表された文献は特定されなかった。97 件中 87 件(90%)において、WGS により院内伝播の仮説が支持された一方、97件中 46 件(47%)では疑われた伝播事象が除外された。97 件中 18 件(18%)では、IPC 介入が WGS の使用によるものとみなされた。しかし、所要時間が 7 日以内でほぼリアルタイムの IPC 行動が促されたことを報告した研究は 3 件(3%)のみであり、WGS に起因する院内 COVID-19 発症率への影響を報告した研究はなかった。

結論

WGS により、急性期医療環境における SARS-CoV-2 の伝播が明らかになり、疫学的調査が促進される可能性がある。しかし、院内の SARS-CoV-2 感染率を低下させる、または活発なアウトブレイクの経過を変化させる介入としてシークエンシングを支持するエビデンスは発見されなかった。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント


よりリアルタイムに近い形でゲノムシークエンシングの解析ができると、新しい知見が得られるかもしれない。

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