スペイン・マドリードの高複雑度小児病棟から得た血流分離株における抗菌薬耐性:2013年から 2021 年
Antibiotic resistance in bloodstream isolates from high-complexity paediatric units in Madrid, Spain: 2013–2021 D. Aguilera-Alonso*, L. Escosa-García, C. Epalza, B. Bravo-Queipode-Llano, F. Camil Olteanu, E. Cendejas-Bueno, M.Á. Orellana, E. Cercenado, J. Saavedra-Lozano *Hospital Gregorio Marañón, Spain Journal of Hospital Infection (2023) 139, 33-43
背景
抗菌薬耐性(AMR)は、高複雑度の医療現場における重要な課題となっている。
目的
9 年間にスペインの高複雑度小児病棟から得た血流分離株において、AMR 率を評価した。
方法
3 施設の 3 次病院で多施設共同後向き観察研究を実施し、2013 年から 2021 年に小児集中治療室、新生児科病棟、腫瘍・血液内科病棟に入院した 18 歳未満の患者から得た血流分離株を分析した。人口統計学的特性、抗菌薬感受性、耐性機構を、2 つの期間(2013 年から 2017 年、2017 年から 2021 年)に分けて解析した。
結果
全体で分離株 1,255 株を対象とした。AMR は、年長の患者および腫瘍・血液内科病棟に入院した患者でより多く認められた。多剤耐性は、グラム陰性菌(GNB)の 9.9%、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の 20.0%で認められたのに対し、腸内細菌目細菌では 8.6%に認められ(P < 0.001)、腸内細菌目細菌における割合は第 1 期から第 2 期までに 6.2%から 11.0%に増加した(P = 0.021)。治療困難な耐性は、GNB の2.7%、緑膿菌の7.4%で認められたのに対し、腸内細菌目細菌では1.6%に認められ(P < 0.001)、腸内細菌目細菌における割合は 0.8%から 2.5%へと増加傾向にあった(P = 0.076)。腸内細菌目細菌におけるカルバペネム耐性は3.5%から7.2%に増加し(P = 0.029)、3.3%がカルバペネマーゼ産生菌(67.9% VIM 型)であった。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の11.0%にメチシリン耐性、腸球菌(Enterococcus)属の 1.4%にバンコマイシン耐性が認められ、いずれの割合も試験期間を通して安定していた。
結論
本研究は、高複雑度小児病棟における高い AMR 率を明らかにしている。腸内細菌目細菌は、耐性株の懸念すべき増加傾向を示し、年長の患者および腫瘍・血液内科病棟に入院した患者において耐性率がより高かった。
監訳者コメント:
スペイン・マドリードの高度複雑小児病棟で分離された薬剤耐性菌に関する研究である。MRSA は全黄色ブドウ球菌の 11%、VRE は全腸球菌属の 1.1%とむしろ日本と比べても低率である。一方で緑膿菌や腸内細菌目細菌の耐性は日本よりもやや高いようである。
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