高度看護施設における MRSA および VRE の多様性と残存性:環境スクリーニング、全ゲノムシークエンシング、および拡散指標の開発
Diversity and persistence of MRSA and VRE in skilled nursing facilities: environmental screening, whole genome sequencing and development of a dispersion index M. Cassone*, J. Wang, B.J. Lansing, J. Mantey, K.E. Gibson, K.J. Gontjes, L. Mody *Michigan Medicine, USA Journal of Hospital Infection (2023) 138, 8-18
背景
高度看護施設におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)およびバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)による環境汚染は、患者がそれらを獲得する一因となりうる。本研究は、高度看護施設の翼棟における MRSA 株と VRE 株の多様性および関連性を評価し、各菌株が室内に残存する傾向および水平伝播する傾向を示す数理指標を開発した。
方法
本稿は、高度看護施設の個室 9 部屋のクラスター 1 件の発生時における連続的な患者占有期間の MRSA および VRE の定着と汚染に関する 8 か月間の縦断研究であり、微生物学的検査および分離株の全ゲノムタイピングにより特性を明らかにした。菌株の“拡散指標”は、菌株が検出された部屋数(患者に検出された場合も含む)を、同室に菌株が連続して検出された回数の平均で除したものと定義した。
結果
MRSA(菌株 10 種類)および VRE(7 種類)が室内または患者から回収され、それぞれ占有イベントの 16.4%、35.6%であった。MRSA は中程度の水平伝播と複数の同室残存エピソードを示した(3 種類の菌株)(全体的な拡散指標 1.08)。VRE については、水平伝播/新たな導入(全体的な拡散指標 3.25)の傾向が高いが、確認された残存エピソードは 1 件のみであった。
解釈
このような環境において、汚染株における高度な多様性や、徹底的な清掃にもかかわらず室内の残存率が高く(MRSA)、部屋間の水平伝播率が高い(VRE)という新たな実態を踏まえて、清掃法の改善、接触予防策の向上、そして何より、局所的で測定・実施可能な疫学的パラメーターを根拠にした情報に基づく選択を可能にする、施設に応じたスクリーニングプログラムの確立を提唱する。
監訳者コメント:
8 か月にわたって skilled nursing facilities(日本の一般病棟に近い)で MRSA および VREの疫学調査を行った研究。全ゲノムシーケンスを用いることによって、想像以上に様々な MRSA や VRE が水平伝播、あるいは清掃にもかかわらず定着していることが判明した。個別の施設毎に適したスクリーニングプログラムを策定することが重要と結論づけている。精細に評価すれば評価するほど、複雑な状況が見えてくるようだ。
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