集中治療室において高まる脅威:多剤耐性ミロイデス(Myroides)属菌の感染およびリスク因子の評価

2023.07.22

An increasing threat in intensive care units: evaluation of multi-drug-resistant Myroides spp. infections and risk factors

A. Gülmez*, A.N. Ceylan, O. Özalp
*Istanbul Başakşehir Çam and Sakura City Hospital, Turkey

Journal of Hospital Infection (2023) 137, 8-16


背景

ミロイデス(Myroides)属菌は土壌中や水中によくみられるグラム陰性桿菌であり、低レベルの日和見病原体として作用し、様々な感染症を引き起こす。

目的

多剤耐性ミロイデス感染のリスク因子と、併存疾患、患者ケアおよび抗菌薬感受性との関連を検討する。

方法

この後向き解析的研究は、イスタンブールのBaşakşehir Çam and Sakura City Hospitalにおいて、培養検体からミロイデス属菌が分離された患者を対象として実施した。患者の総入院日数、初回分離日、30 日死亡率の値を統計学的に解析し、P < 0.05を有意とみなした。

結果

患者 228 例の培養検体 437 検体からミロイデス属菌が分離された。このうち患者 210 例(92.1%)が無症候性細菌尿、18 例(7.9%)がミロイデス属菌に起因する感染症に分類された。患者 174 例(76.3%)は集中治療室でフォローアップされ、感染患者の総入院日数(中央値 24.5 日)と初回分離日(中央値 9.5 日)は、定着患者の値と比較して短かった(それぞれ P = 0.023、0.030)。感染患者と定着患者の間で、30 日死亡率に差は認められなかった(P = 0.312)。

結論

ミロイデス感染は、長期間入院した患者、広域抗菌薬を使用した患者、侵襲的処置を受けた患者、糖尿病や脳血管疾患などの共同因子を有する患者においてより高頻度に認められた。さらに、ミロイデス・オドラタス(Myroides odoratus)の耐性率はミロイデス・オドラティミマス(Myroides odoratimimus)の耐性率より高く、M. odoratimimus 感染患者の治療にキノロン系抗菌薬を用いると、治癒率が上昇した。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント


ミロイデス、という菌名は馴染みがない人が大半ではないだろうか。本論文にもあるように、大半が無症候性細菌尿患者の尿から検出され、稀に感染症の原因になる。当院でもほとんどが尿から検出され、属レベルまでしか同定されておらず、薬剤感受性検査も行われていない。一方で、ミロイデス属菌は近年、日和見病原体としての重要性が増しているという報告もある。ミロイデス属菌が検出された時の同定や薬剤感受性検査、感染症の原因菌としての位置づけなどについて、一度自分の病院の検査室と意見交換してみると良いだろう。

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