開頭術後の重症外傷性脳損傷患者における中枢神経系感染症の予測モデル
Prediction model of central nervous system infections in patients with severe traumatic brain injury after craniotomy G. Lu*, Y. Liu, Y. Huang, J. Ding, Q. Zeng, L. Zhao, M. Li, H. Yu, Y. Li *Yangzhou University, China Journal of Hospital Infection (2023) 136, 90-99
背景
現在、外傷性脳損傷患者における中枢神経系感染症は、臨床所見と脳脊髄液細菌培養の結果に従って診断されることが多い。しかし、早期の検体採取は困難である。
目的
開頭術後の重症外傷性脳損傷患者における中枢神経系感染症を予測するためのノモグラムを開発・評価すること。
方法
本後向き研究は、2014 年 1 月から 2020 年 9 月の間に神経集中治療室に入室した重症外傷性脳損傷の成人連続症例を対象に実施した。ラッソ回帰分析(LASSO)および多変量ロジスティック回帰分析を適用してノモグラムを作成し、k 分割交差検証(k = 10)を適用して検証した。
結果
外科的治療を受けた重症外傷性脳損傷患者計 471 例が対象となり、そのうち 75 例(15.7%)が中枢神経系感染症と診断された。血清アルブミン濃度、入院時の脳脊髄液耳漏、脳脊髄液漏出、脳脊髄液採取、術後再出血が中枢神経系感染症と関連しており、ノモグラムに組み入れられた。曲線下面積の値は訓練セットでは 0.962、内部検証では 0.942 であり、我々のモデルは十分な予測性能をもたらした。較正曲線は、予測転帰と実際の転帰の十分な一致を示した。決定曲線分析が広範な閾値確率を網羅するため、本モデルは臨床用途に有用であった。
結論
重症外傷性脳損傷患者の中枢神経系感染症に合わせたノモグラムは、医師が早期介入の実施のために高リスク患者をスクリーニングするのに役立ち、中枢神経系感染症の発生率を低下させる可能性がある。
監訳者コメント:
外傷性脳損傷患者における中枢神経系感染症の診断は、早期の脳脊髄液採取が重要であるが容易ではないため、早期診断のための予測モデルが必要となる。これまでに指摘されている感染症のリスク因子としては、高齢、男性、4 時間を越える手術時間、2 回以上の手術回数、髄液漏、抗菌薬予防投与、CSF ドレナージなどであったが、本研究では血清アルブミン濃度、入院時 CSF 耳漏あり、CSF 漏出、CSF 採取、術後再出血が独立したリスク因子であった。これらのリスク因子をもとにラッソ回帰分析などの新たな統計学的手法を駆使して作成されたノモグラムでは十分な感度と特異度を持ち、感染症予測スクリーニング機能として十分可能であることが示唆された。
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