麻酔作業区域における黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の伝播は、手術用に投与された予防的抗菌薬に対する耐性株の場合、手術部位感染症発症に関連するリスクを高める★

2023.04.19

Transmission of Staphylococcus aureus in the anaesthesia work area has greater risk of association with development of surgical site infection when resistant to the prophylactic antibiotic administered for surgery

R.W. Loftus*, F. Dexter, J.R. Brown
*University of Iowa, USA

Journal of Hospital Infection (2023) 134, 121-128


背景

麻酔作業区域に由来する予防的抗菌薬耐性菌の伝播が、手術部位感染症(SSI)のリスクをどの程度高めるのかは不明である。SSI リスクは、伝播なしの場合から、予防的抗菌薬耐性株の伝播の場合へと、次第に上昇するという仮説を立てた。

方法

本研究は、同様の組み入れ基準と検体収集法を用いた、以前に発表された 2 件の研究(2009 年から 2010 年の観察研究と、2018 年から 2019 年の無作為化試験)において収集された保管された検体の後向き解析であった。保管された分離株は、バーコードによって患者のすべての人口統計学的特性および手術に関する情報(投与された予防的抗菌薬、SSI の伝播および発症など)とリンク付けされた。本研究のために、保管されたすべての分離株に対して予防的抗菌薬の感受性試験を実施し、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の伝播(伝播なし、予防的抗菌薬感受性分離株の伝播、および予防的抗菌薬耐性株の伝播)と SSI との次第に上昇する関連について評価した。

結果

SSI 発症のリスクは、黄色ブドウ球菌の伝播がない場合は 2%(406 例中 8 例)、用いられた予防的抗菌薬に感受性の黄色ブドウ球菌株が伝播していた場合は 11%(84 例中 9 例)、予防的抗菌薬に耐性の黄色ブドウ球菌株が伝播していた場合は 18%(22 例中 4 例)であった。次第に上昇する関連について Cochrane-Armitage の両側検定を実施したところ、P < 0.0001 であった。これらの 3 グループをそれぞれ 0、1 および 2 として処理すると、精確ロジスティック回帰により、SSI のオッズは 1 単位上昇について 3.59(95%信頼区間 1.92 ~ 6.64、P < 0.0001)上昇した。

結論

麻酔作業区域における黄色ブドウ球菌の伝播は、特に投与された予防的抗菌薬にその株が耐性の場合、SSI のリスクを確実に高める。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

麻酔作業区域に由来する予防的抗菌薬耐性菌の伝播が、手術部位感染症(SSI)のリスクを高めることを黄色ブドウ球菌で示した研究。周術期の細菌感染は、直接的な汚染、エアロゾル化した粒子、隣接する皮膚表面から別の皮膚表面への拡散、および血管内注射によって発生し、麻酔作業区域は盲点になりがちだが、重要なリザーバーになりうる。予防的抗菌薬耐性黄色ブドウ球菌とはそのままの意味で、MRSA に一致するとは限らない。

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