長期ケア施設における COVID-19 アウトブレイクの評価
Assessment of COVID-19 outbreaks in long-term care facilities C.C. Bennett*, M. Welton, J. Bos, G. Moon, A. Berkley, L. Kavlak, J. Pearson, G. Turabelidze, J. Frazier, N. Fehrenbach, C.K. Brown *Centers for Disease Control and Prevention, USA Journal of Hospital Infection (2023) 134, 7-10
背景
2021 年夏、米国では B.1.167.2 系統の変異株(デルタ株)が急速に蔓延し、SARS-CoV-2 株の主流となった。ミズーリ州では、州全域の長期ケア施設(LTCF)のうち職員のワクチン接種率が低い施設での多数のアウトブレイク、また地方のコミュニティにおける軽減措置の遵守不良を確認した。
目的
デルタ変異株急増中のミズーリ州において、職員および入居者に影響を及ぼす LTCF で発生した COVID-19 アウトブレイクについて報告すること。
方法
LTCF 178 施設での COVID-19 アウトブレイクが、Missouri Department of Health and Senior Services により特定された。感染症伝播、ワクチン接種状況、入居者と職員のアウトカムを評価するために、最も疾病負荷の高い LTCF の症例データを分析した。軽減措置を評価するために、追加の調査法として、かなりの伝播がみられたコミュニティで COVID-19 アウトブレイクが最近発生した施設への現地訪問も含めた。
結果
2021 年 4 月 22 日から 7 月 29 日の間に、LTCF 10 施設で COVID-19 症例が職員 72 例、入居者 87 例の計 159 例で確認された。ワクチン接種率は、入居者症例では 74.7%超であったのに対し、職員症例では 23.6%であった。接種済み入居者は、未接種入居者と比較して、入院および死亡の報告の割合が低かった。施設のサンプルのデータ分析および接触者追跡調査により、施設内への SARS-CoV-2 ウイルスの持ち込みの主要因子は、おそらく職員であることが示唆される。COVID-19 軽減措置の遵守は、訪問した各施設で異なっていた。
結論
負荷の高いアウトブレイクが発生した施設において、職員症例と入居者症例の間でワクチン接種率に差があることがデータより示された。少なくとも 2 施設で軽減措置の違いが明らかになった。
監訳者コメント:
この研究は、2021 年夏にミズーリ州で発生したデルタ変異株が急増中の、LTCF(長期ケア施設)における COVID-19 アウトブレイクに関する報告である。178 の LTCF の中で、特定の 10 の施設で、職員 72 例と入居者 87 例の計 159 例が感染し、職員のワクチン接種率は 23.6%であり、入居者の 74.7%よりも低かったことが示された。分析により、施設内へのウイルスの持ち込みは、おそらく職員が原因であることが示唆された。職員へのワクチン接種の重要性が示唆されたが、さらなる変異株のためワクチンの感染予防効果も低下してきており、一概に結論を出しにくいところもある。
COVID-19 の施設内アウトブレイクはなかなかゼロにできない。早期発見を行い、犠牲者を減らす努力を惜しんではなない。
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