重大な転帰をもたらす感染症に感染した患者のケアに用いる、汚染から保護された電動ファン付き呼吸用保護具を組み込んだ個人防護具セットのバリデーション★★

2023.04.19

Validation of personal protective equipment ensembles, incorporating powered air-purifying respirators protected from contamination, for the care of patients with high-consequence infectious diseases

B. Crook*, C. Bailey, A. Sykes, M.C. Hoyle, C. Evans, B. Poller, C. Makison-Booth, D. Pocock, C. Tuudah, B. Athan, S. Hall
*Health and Safety Executive, UK

Journal of Hospital Infection (2023) 134, 71-79


背景

高度隔離施設から成る UK High Consequence Infectious Diseases(HCID)Network は、感染性および危険性の高い、接触または空気伝播する感染性疾患の患者に対するケアを提供している。ほとんどの HCID 施設において医療従事者は、頭部顔面と呼吸器を保護するために電動ファン付き呼吸用保護具(PAPR)を組み込んだ個人防護具(PPE)セットを装着している。一部の PAPR には、PPE の外側からあるいは覆うように装着する部品があり、再使用可能な部品の汚染除去が必要となる。本研究では、いずれも PPE の下に再使用可能な部品を装着する、2 つの類似した PAPR について試験を行った。

目的

PAPR および PPE についてシナリオに基づいた試験を行い、使いやすさ、快適さについて、また個体内の他の部位への交差汚染を引き起こすことなく汚染された PPE を外すことができるかどうかについて確認した。

方法

訓練された医療従事者ボランティア(N = 20)に、PAPR/PPE セットを装着した状態で紫外線蛍光マーカーを噴霧した。参加者は、患者ケアを模した行動を行い、その後、汚染された PPE を確立されたプロトコールに従って外した後、個体内の他の部位への交差汚染の有無を紫外線光により可視化した。参加者はまた、PPE がどれだけ快適であるかを評価するための質問票に回答した。

結果および結論

この防護具セットは、極端な「ワーストケース・シナリオ」条件下で試験を行い、身体および手作業の巧緻性テストで補った。参加ボランティアは、この試験について、訓練および PPE 評価において有用であると考えた。質問票からのフィードバックと、セットを外すのを手伝う同僚による観察を含め、得られたデータから、このPAPR/PPE セットを採用するという、エビデンスに基づくHCID Network の決定が裏付けられた。選択された防護具セットにおいて交差汚染イベント 1 件が記録され、これはセットを外す際のエラーによるものと考えられ、したがって練習を重ねることでなくすことができると考えられた。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

エボラ病など重大な転帰をとる感染症(HCID)患者を収容する施設が英国には 5 カ所ある。これまで英国でこれらの感染症に使用されていた PPE の組み合わせは、防水性のカバーオール(つなぎ)に PAPR 装着であるが、PAPR にはその上に防護用のヘッドカバー(顔全体を覆う形のフード)を着用し、これにつながるフィルターで清浄化した空気を送るホースと送風装置が加わる。しかし、ホースや送付装置は汚染されるため再使用時の除菌の保証が要求されるため管理が煩雑である。さらに充電器のメンテナンスやこれらの防護具を脱ぐ際には同僚の助けが必要等、かなり手間がかかっていた。PPE の新たな組み合わせを英国で検討するにあたり、すべての再使用機材類はカバーオールの中に収まっていて、できるだけ単独で脱着ができることとし、2 種類の PAPR の評価をした結果、1 種類を最終的に選考した。

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*University of Leicester, UK

 

Journal of Hospital Infection (2021) 110, 89-96

 

 

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