集中治療室において手指消毒遵守を高めるための双方向フィードバックシステム★
An interactive feedback system for increasing hand antisepsis adherence in stationary intensive care P. Zwicker*, M. Meng, S. Friesecke, T. Stein, A. Herzog, C. Herzer, M. Kammerlander, T. Gebhardt, C. Kugler, A. Kramer *University Medicine, Germany Journal of Hospital Infection (2023) 133, 73-80
背景
感染症を引き起こす病原体は多くの場合、医療従事者の手指を介して伝播される。したがって、手指消毒が感染を予防するという強い疫学的エビデンスがある。様々な因子に依存するが、手指消毒遵守率は 9.1%から 85.2%の範囲である。
目的
手指衛生遵守率を検出するため、リアルタイムのフィードバックを与えて、必要に応じて医療スタッフに対してアルコール擦式製剤を使用するようリマインドする新規応答システムについて評価すること。
方法
このモニタリングシステムは以下の3つの部分から成る:アルコール擦式製剤の存在を検知してフィードバックを与えることのできる携帯型の応答機、患者の周囲環境への出入りを認識する発信機、擦式製剤ディスペンサーに設置された手指消毒実践を計数するセンサー。これらの構成要素により、手指消毒の5つの機会の1、4、および5 に従って必要であるにもかかわらず手指消毒が実施されなかった場合に同システムはフィードバックを与える。遵守の評価は、2 つのユースケースと 5 つのフェーズ、すなわちベースライン測定時から始まって、その後の介入期、ならびにフィードバック効果の持続可能性を検証するための無介入フェーズにおいて実施した。
結果
このモニタリングシステムを使用したところ、手指消毒遵守率はベースライン測定時と比較して 最大104.5%まで上昇した。しかし、この介入が終了すると、手指消毒遵守率はベースライン測定時と同等またはそれ未満にまで低下した。
結論
短期の介入のみでは、手指消毒遵守における長期の変化をもたらすには不十分である。そのためには、恒常的なフィードバックおよび/または多面的介入戦略への統合が必要である。
監訳者コメント:
手指衛生の遵守率調査では直接観察法が標準的であるが、直接観察法にも観察者の負担やホーソン効果(他者から観察されていることで良い結果をもたらす)などの限界がある。そうした中で本研究のようなデバイスによるモニタリングシステムを導入し、手指衛生の遵守率向上に向けた試みが行われているが、短期的には効果があるものの、長期的には十分な効果は得られていない。長期的な手指衛生遵守率向上には恒常的なフィードバックや WHO も唱えているように多面的な手指衛生改善戦略を行い、手指衛生を組織の安全風土に根ざしてく必要がある。
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