HIV 非感染免疫不全患者におけるフェイスマスクサンプリングによるニューモシスチス・イロベチイ(Pneumocystis jirovecii)の呼気中への排出量と無症候性の呼気中への排出の検出

2023.02.23

Exhaled Pneumocystis jirovecii output and detection of asymptomatic exhalation by facemask sampling in HIV-uninfected, immunocompromised patients

M.T. Abdulwhhab*, C.W. Holmes, J. Mutuyimana, S.S.F. Koo, A. Wisniewska, J. Auty, N. Perera, M.R. Barer
*University of Leicester, UK

Journal of Hospital Infection (2023) 132, 20-27


背景

ニューモシスチス・イロベチイ(Pneumocystis jirovecii)肺炎の伝播は十分に定義されていない。以前の研究では P. jirovecii 肺炎を有するヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染患者が入室している部屋の空気をサンプリングしていたが、HIV 非感染患者の自然で直接的な呼気中への排出に関しては依然として調査中である。本稿では、臨床用フェイスマスクを用いて、P. jirovecii 肺炎が疑われる HIV 非感染患者の潜在的な P. jirovecii の呼気中への排出を検査および定量し、病原体の呼気中への排出は臨床的または放射線学的に明らかにできるかどうか決定した。

方法

欧州白血病感染症会議(European Conference on Infections in Leukaemia;ECIL-5)のガイドラインに基づいて P. jirovecii 肺炎が強く疑われる英国・レスターの 45 例の患者は、いずれもゼラチン/ポリビニルアルコールのサンプリング基質を有するフェイスマスク 1 枚を 1 時間着用し、通常通りに呼吸した。P. jirovecii によるマスクの汚染は、ミトコンドリア大サブユニット(MtLSU)を標的とする改変定量 PCR を用いて評価した。胸部 X 線検査およびコンピュータ断層撮影(CT)での放射線学的所見を、関連する臨床および検査所見とともに、P. jirovecii のシグナルとの相関に関してグレード判定および解析した。

結果

  1. jirovecii 肺炎の診断を受けた患者 20 例中 7 例と、P. jirovecii 肺炎が疑われるものの診断未確定の患者 19 例中 3 例で P. jirovecii が検出された。捕獲されたシグナルの中央値は 8.59×104 MtLSU コピー/マスク(四分位範囲[IQR]= 3.01 × 105 ~ 1.81 × 104)であった。血中β-D グルカン検査結果はマスク検出データと相関したが(r = 0.65、P<0.0001)、その他の臨床指標および放射線学的所見は相関しなかった。P. jirovecii を呼気中へ排出した患者 10 例中 5 例は正常な胸部 X 線検査結果を示し、呼気中への排出量の中央値は 1.28 × 105 コピー/マスク(IQR = 1.51 × 105 ~ 2.27 × 104)であった。P. jirovecii を呼気中へ排出した患者 2 例(7.64 × 104 コピー/マスク)は無症状であった。

結論

P. jirovecii は通常の呼吸時に十分に呼気中へ排出され、HIV 非感染患者が着用するフェイスマスクにおいて検出可能である。臨床および放射線学的所見はいずれも P. jirovecii の呼気中への排出に相関しなかった。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

PCP 患者では呼気に P. jirovecii が含まれ、ヒトヒト感染の原因になることが推測されているが、本論文はそれを利用して非 HIV 患者における PCP を診断する方法について検討している。気管支鏡検査などの侵襲的な処置を行わなくても、マスクなどにトラップされる PCP を検出する方法が紹介されている。

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