17 年間にわたり 12 か国で全ゲノムシークエンシングによって調査された病院・地域環境から回収された新興 Panton-Valentine 型ロイコシジン陽性クローン複合体(CC)5 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus)IVc クローン

2023.02.23

An emerging Panton-Valentine leukocidin-positive CC5-meticillin-resistant Staphylococcus aureus-IVc clone recovered from hospital and community settings over a 17-year period from 12 countries investigated by whole-genome sequencing

B.K. Aloba*, P.M. Kinnevey, S. Monecke, G.I. Brennan, B. O’Connell, A. Blomfeldt, B.A. McManus, W. Schneider-Brachert, J. Tkadlec, R. Ehricht, A. Senok, M.D. Bartels, D.C. Coleman
*Dublin Dental University Hospital, University of Dublin, Ireland

Journal of Hospital Infection (2023) 132, 8-19


背景

最近、スリランカの新たなPanton-Valentine型ロイコシジン(PVL)陽性メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)クローン複合体(CC)5-MRSA-IVc(「スリランカ」クローン)について記述が行われた。類似の分離株によって、最近、アイルランドの病院でのアウトブレイク 1 件が引き起こされた。

目的

全ゲノムシークエンシング(WGS)を用いて、病院および地域環境由来の PVL 陽性 CC5-

MRSA-IVc 分離株の国際的な拡散と多様性について調査すること。

方法

17 年間にわたり 12 か国の病院および地域環境由来の PVL 陽性 CC5-MRSA-IVc(N = 214、46 の「スリランカ」クローンを含む)に対し、コアゲノム一塩基多型(cgSNP)解析、コアゲノム multi-locus sequence typing(cgMLST)、抗菌薬耐性および毒性遺伝子のマイクロアレイによる検出法を用いて調査した。対照には 29 の PVL 陽性 および 23 の PVL 陰性 CC5/ST5-MRSA-I/II/IVa/IVc/IVg/V が含まれた。

結果

cgSNP に基づく最尤法解析によって、214 中 209(97.7%)の CC5-MRSA-IVc がクレード 1 に分類され、分離株間の cgSNP の平均値は 110 であった。クレード 3 には残りの 5 つの CC5-MRSA-IVc が含まれ、分離株間の cgSNP の平均値は 92 であった。クレード 2 には対照である 7 つの PVL 陽性 CC5-MRSA-IVaが含まれたのに対し、残りの 45 の対照は外れ値のグループを形成した。cgMLST に基づく最小全域木解析によって、すべての CC5/ST5-MRSA-IVc 間の対立遺伝子の差異は比較的小さく平均値は 57 であることが明らかになった。214 の CC5/ST5-MRSA-IVc はすべて「スリランカ」クローンと同定され、主に spa 型 t002(186/214)であり集団の多様性は小さく、類似の範囲の毒性遺伝子と様々な抗菌薬耐性遺伝子を保有していた。214 のスリランカクローン分離株とクレード 2の対照はすべて 9616-bp 染色体 PVL コードファージレムナントを保有しており、どちらも PVL 陽性メチシリン感受性の祖先から生じたことが示唆された。スリランカクローン分離株の半数超が感染症由来(142/214)であり、詳細なメタデータが入手可能(168/214)であり、多くは市中獲得型(85/168)であった。

結論

pvl の安定的な染色体保持によって、スリランカクローンの拡散が促進される可能性がある。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

黄色ブドウ球菌の毒性因子である PVL と菌の拡散性には直接的な相関はないが、皮膚軟部組織感染症を起こしやすかったり、定着しやすいという性質は結果的に特定のクローンの選択と拡散につながる可能性がある。全ゲノムシークエンシングによって様々な知見が今後も得られるであろう。

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