武漢の 3 次病院における NDM-1 および KPC-2 同時産生カルバペネム耐性高病原性肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)ST11-K64 の検出★

2023.01.06

Detection of carbapenem-resistant hypervirulent Klebsiella pneumoniae ST11-K64 co-producing NDM-1 and KPC-2 in a tertiary hospital in Wuhan

Y. Huang*, J. Li, Q. Wang, K. Tang, X. Cai, C. Li
*Renmin Hospital of Wuhan University, China

Journal of Hospital Infection (2023) 131, 70-80


背景

カルバペネム耐性高病原性肺炎桿菌(Carbapenem-resistant hypervirulent Klebsiella pneumoniae;CR-hvKP)は公衆衛生に深刻な問題をもたらしている。今日まで、NDM-1 と KPC-2 を同時産生する菌株(NDM-1-KPC-2-CR-hvKP 株)に関する報告は、少数の散発的なものしかない。

目的

この後向き研究では、中国中部の 3 次病院 1 施設における高病原性肺炎桿菌(hvKP)の臨床的特徴、有病率および抗菌薬耐性を調査し、NDM-1-KPC-2-CR-hvKP 株(KP169)の特性を明らかにした。

方法

臨床データを収集した。hvKP 分離株について、抗菌薬と病原性に関連する表現型の決定および遺伝子型判定、莢膜血清型遺伝子解析、multi-locus sequence typing を行った。KP169 株に全ゲノムシークエンシング(WGS)を行った。

結果

肺炎桿菌の臨床分離株 109 株のうち 45 株は hvKP であった。そのうち 37 株は院内感染に由来し、24 株はカルバペネマーゼを発現した。NDM-1-KPC-2-CR-hvKP 8 株が同定され、腸内細菌反復遺伝子間コンセンサス PCR によってそれらがクローン的に関連していることが示された。WGS によって、ST11-K64 に属する KP169 株は単一の 5.5-Mb の染色体と 5.5 ~ 221.6 kb の 6 つのプラスミドを有することが明らかになった。blaNDM-1 遺伝子はプラスミド pKP169-P3 にあり、blaKPC-2blaSHV-12blaTEM-1 は IncFII/IncR pKP169-P2 にあった。IncHI 1/IncFIB 病原性プラスミド pKP169-P1 は、以前に報告されている pKPC-CR-hvKP-C789 プラスミドに類似していた。プラスミド安定性試験によって、blaKPC-2blaNDM-1 を保有するプラスミドは、宿主内で安定して維持されることが示された。

結論

著者の知る限りでは、本研究は NDM-1-KPC-2-CR-hvKP 株 8 株による今日までで最も大規模なコホートであり、伝播を防ぐための抗菌薬適正使用支援およびプロトコールが緊急に必要であることを示唆している。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

中国武漢におけるカルバペネム耐性高病原性肺炎桿菌の報告であるが、抗菌薬の適正使用と適切な感染対策が実施できていない病院であることが強くうかがわれ、中国国内のみならず、海外への拡散は極めて脅威である。2015 年世界保健総会の薬剤耐性 AMR に関するグローバルアクションプランの提案から 8 年が経過しようとしているが、コロナ禍により AMR への関心度が低下しており、日本を含め世界で AMR 対策に今一度取り組む必要性がある。

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