心臓治療を受ける患者の鼠径部の腸球菌保菌率:経カテーテル大動脈弁置換術を受ける患者に対する抗菌薬セファロスポリン予防投与の検証
Prevalence of enterococcal groin colonization in patients undergoing cardiac interventions: challenging antimicrobial prophylaxis with cephalosporins in patients undergoing transcatheter aortic valve replacement D. Widmer*, A.F. Widmer, R. Jeger, M. Dangel, S. Stortecky, R. Frei, A. Conen *University Hospital Basel, Switzerland Journal of Hospital Infection (2022) 129, 198-202
背景
セファロスポリンは経カテーテル大動脈弁置換術前の予防投与に推奨されている。経カテーテル大動脈弁置換術後の感染性心内膜炎は、症例の最大 30%が腸球菌(enterococci)に起因し、経カテーテル大動脈弁置換術後早期に顕著である。予防投与は腸球菌を対象に含まないという理由だけでなく、大部分の経カテーテル大動脈弁置換術は経大腿アクセスによって行われるという理由もあり、鼠径部の腸球菌保菌は感染源の 1 つと仮定されてきた。腸球菌の存在を実証するために鼠径部のマイクロバイオームを分析したデータはほとんどない。
目的
経大腿治療を受ける心臓病学的患者の鼠径部における腸球菌の保菌率を評価すること。
方法
今回の前向きコホート研究は、2020 年 2 月から 8 月の間に、スイスのバーゼル大学病院で実施した。経大腿心臓治療を受ける治療継続患者の鼠径部から、抗菌薬予防投与前に 2 つの皮膚スワブを採取した。各患者に対し、鼠径部の消毒前と消毒後にスワブを採取した。スワブは地域の微生物検査室で、検証済みの培養方法の後に分析を行った。
結果
対象患者 290 例のうち、245 例(84.5%)は冠動脈造影検査を、31 例(10.7%)は経カテーテル大動脈弁置換術を、8 例(2.8%)は右心カテーテル検査を、5 例(1.7%)は卵円孔開存閉鎖術を、1 例(0.3%)は経皮的僧帽弁クリップ術(MitraClip)を受けた。腸球菌は消毒前に 48 例の患者で検出され、消毒後も依然として 3 例の患者で培養され、腸球菌が消毒後にのみ検出された(すなわち消毒前は検出されなかった)患者は 1 例であった。腸球菌の保菌率は消毒前が 16.6%、消毒後が 1.4%であった。腸球菌保菌患者は、非保菌患者よりも体格指数が有意に高く、糖尿病である傾向が強かった。
結論
よくみられる鼠径部の腸球菌保菌は、経カテーテル大動脈弁置換術関連の感染性心内膜炎患者由来の腸球菌の高頻度の分離とともに、現在推奨されている経カテーテル大動脈弁置換術前の抗菌薬セファロスポリン予防投与を、腸球菌に対して有効な抗菌化合物の予防投与に変更すべきであるという強力なエビデンスを提示するものである。
監訳者コメント:
鼠径部に腸球菌が存在していることは予想されるが、それなら下部消化管手術などでも術野には腸球菌が存在するはずである。処置時の抗菌薬投与の目的は、存在する微生物をすべてカバーすることではない。本研究の結果から、腸球菌をカバーできる抗菌薬を予防に使用すべきだというのは、やや論理の飛躍があるように思える。
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