再利用された個人防護具の危険性:医療従事者およびワークステーションの汚染★

2022.09.05

The dangers of reused personal protective equipment: healthcare workers and workstation contamination

D. Doos*, P. Barach, N.J. Alves, L. Falvo, A. Bona, M. Moore, D.D. Cooper, R. Lefort, R. Ahmed
*Indiana University School of Medicine, USA

Journal of Hospital Infection (2022) 127, 59-68

背景

個人防護具(PPE)は、医療従事者を保護するために必要不可欠である。PPE の再利用の実践は、医療従事者による偶発的な汚染の高レベルなリスクをもたらす。積極的に患者の看護をしながら PPE を安全に再利用する実用的な手段または方法を比較する医学文献は不足している。

 

方法

本研究では、新型コロナウイルス感染症患者の模擬の完全評価を実施しながら、5 回の着脱対応を行う 28 名の経験豊富な臨床参加者の観察を行った。参加者の N95 マスクは、PPE の着脱中に発生したあらゆる偶発的な媒介物の移動を評価するため、蛍光色素でコーティングされた。新たな汚染場所を評価するため、それぞれの脱衣対応後にブラックライトを用いて参加者を評価し、また PPE の脱衣によって発生した蓄積表面積に関して評価した。さらに、参加者のワークステーションの汚染に関して評価した。

 

結果

全参加者は、上肢、首および顔面にある程度の汚染を経験した。媒介物の移動リスクが最も蓄積した場所は、フックおよび紙袋による保管法に関連しており、卓上保管法では汚染の発生が最も少なかった。再利用の N95 マスクの卓上での保管は、保管に紙袋を利用するという米国疾病管理予防センターの現在の推奨よりも、より安全な代替策であることが分かった。PPE を着脱する全参加者が汚染されていた。

 

結論

PPE の再利用の実践は、医療従事者に対して偶発的な交差感染汚染の容認しがたい高レベルのリスクをもたらす。現在の PPE のデザインは、医療従事者を保護するために工学および使い勝手を改善した完全なデザインの見直しを必要としている。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

PPE の使い回しによるコンタミに関する論文。フルテキストには、使い回されている N95マスクの写真なども掲載されている。N95 マスクの再利用には、多くの施設で行われている(そして CDC が推奨していている)紙袋での収納は、コンタミのリスクが高いということだが…一方で、蛍光色素を用いた模擬実験であるというリミテーションも踏まえて解釈したいところ。

同カテゴリの記事

2023.04.19
Epidemiology of healthcare-associated SARS-CoV-2 outbreaks in Germany between March 2020 and May 2022

B. Suwono*, M. Brandl, J. Hecht, T. Eckmanns, S. Haller
*Robert Koch Institute, Germany

Journal of Hospital Infection (2023) 134, 108-120


2021.01.31

Does nosocomial COVID-19 result in increased 30-day mortality? A multi-centre observational study to identify risk factors for worse outcomes in patients with COVID-19

K.S. Khan*, H. Reed-Embleton, J. Lewis, J. Saldanha, S. Mahmud

*University Hospital Hairmyres, UK

Journal of Hospital Infection (2021) 107, 91-94

2024.06.30
Comparison of an algorithm, and coding data, with traditional surveillance to identify surgical site infections in Australia: a retrospective multi-centred cohort study

P.L. Russo*, A.C. Cheng, M. Asghari-Jafarabadi, T. Bucknall
*Monash University, Clayton, Australia

Journal of Hospital Infection (2024) 148, 112-118




2021.11.30
Hospital outbreak of New Delhi metallo-β-lactamase type-1 (NDM-1) in Salmonella enterica with interspecies plasmid transmission

A.G. Beukers*, M.A. John, R. Davis, A. Lee, S.J. van Hal
*Royal Prince Alfred Hospital, Australia

Journal of Hospital Infection (2021) 117, 23-27


2022.09.05
Effectiveness of an enhanced antibiotic stewardship programme among paediatric patients in a tertiary hospital in Vietnam

H.Q. Nguyen*, H-Y. Nguyen-Thi, P-T. Huynh, N.D.T. Le, N.T-Q. Nguyen, Y. Hsia
*University of Medicine and Pharmacy at Ho Chi Minh City, Vietnam

Journal of Hospital Infection (2022) 127, 121-128

JHIサマリー日本語版サイトについて
JHIサマリー日本語版監訳者プロフィール
日本環境感染学会関連用語英和対照表

サイト内検索

レーティング

アーカイブ