アイルランドの過密な救急部において全ゲノムシークエンシングにより明らかにされた SARS-CoV-2 伝播の広がり

2022.08.16

Repeated transmission of SARS-CoV-2 in an overcrowded Irish emergency department elucidated by whole-genome sequencing

D. Hare*, C. Meaney, J. Powell, B. Slevin, B. O’ Brien, L. Power, N.H. O’ Connell, C.F. De Gascun, C.P. Dunne, P.J. Stapleton
*University Hospital Limerick, Ireland

Journal of Hospital Infection (2022) 126, 1-9

目的

COVID-19 パンデミック第 3 波における当院の混雑した救急部に端を発した多病棟での複雑な新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)アウトブレイクは、局在領域の全ゲノムシークエンシング(WGS)により迅速に解明された。このアウトブレイクに関して、詳細なゲノム疫学的記述を提供することを目的とした。

 

方法

鼻咽頭スワブから抽出したウイルス RNA の逆転写リアルタイム PCR により SARS-CoV-2 を検出した。ARTIC v3 シークエンシングプロトコールに従い、Oxford MinION Mk1C 装置を用いて WGS を実施した。artic-ncov2019 バイオインフォマティクスパイプライン(bioinformatics pipeline)により高品質のコンセンサスゲノムを構築し、最大尤度によって推定されるウイルス系統樹を作成した。疫学的に関連する配列における一塩基多型(SNP)の閾値 0 ~ 1 によりクラスターを定義した。

 

結果

リムリック大学病院(University Hospital Limerick) において、入院後のサーベイランス検査により医療関連 SARS-CoV-2 感染症 4 例が検出され、その後の 2021 年 4 月に 2 病棟で COVID-19 アウトブレイクが宣言された。接触者追跡調査により、新たな接触者 12 例が特定され、いずれも救急部の「COVID ゾーン」への直接的または間接的な関わりがあった。WGS によりすべての配列が Pangolin B.1.1.7 系統に分類され、SNP レベル解析によって、異なるが同時に存在する感染症クラスター 2 件が確認された。救急部での伝播の広がりが認められ、混雑した領域でストレッチャーに乗せられた患者を巻き込み、結果として、感染症は 3 病棟全域に、次いで地域社会へと多発した。これらの結果は、救急部における交差感染を拡大させないための低減策について情報をもたらした。

 

結論

過密な救急部において SARS-CoV-2 の交差感染が繰り返し発生した。ウイルスの WGS により、当院における複雑なウイルス伝播ネットワークが明らかになり、感染、予防、制御策について情報が提供された。

 

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

院内伝播が全ウイルスゲノム解析により同じ SARS-CoV-2 遺伝子クローンによるものかどうかを検証することができれば、感染ルートの特定や当該施設での感染対策の徹底のバロメーターとなる。

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