集中治療室内の環境表面は真菌のリザーバである:イタリア北部における真菌種の分布★

2022.05.16

ICU environmental surfaces are a reservoir of fungi: species distribution in northern Italy

A. Prigitano*, P.M. Perrone, M.C. Esposto, D. Carnevali, F. De Nard, L. Grimoldi, N. Principi, M. Cogliati, S. Castaldi, L. Romanò
*Università degli Studi di Milano, Italy

Journal of Hospital Infection (2022) 123, 74-79


 

背景

院内感染症の予防および制御は公衆衛生の目標である。医療関連真菌感染症に関する懸念が近年高まっているが、それは新規病原体の出現と拡散により、抗真菌薬耐性の増大と病院におけるアウトブレイクの増加のためである。

 

目的

イタリア、ミラノにある病院 8 施設の集中治療室 12 室において、環境表面上の医学的に重要な真菌種の存在について調査すること。

 

方法

2019 年 11 月から 2020 年 1 月に、ベッドステーションおよび診療ワークステーション周囲の表面上に設置した接触培地を用いて環境サンプリングを行った。真菌分離株の同定を行い、その一部について in vitro で抗真菌薬感受性を調べた。

 

結果

ベッドステーション 61 台および診療ワークステーション 17 台から、環境サンプル計 401 個を採取した。病院 1 施設を除いた全病院で陽性サンプルが認められ、陽性率の範囲は 4% から 24.2%の間であった。糸状真菌が主として注入ポンプ(23.2%)および患者用テーブル(21.2%)で検出された一方、酵母菌は主としてコンピューター(25%)およびフロア(10.9%)で検出された。真菌は全サンプルの 12% で分離された。糸状真菌は陽性サンプルの 70.8%で検出され、主としてアスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)であった一方、酵母菌は陽性サンプルの 27.1%で検出され、主としてカンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)(42.8%)およびカンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)(28.6%)であった。真菌は患者ベッドの近傍およびワークステーションの表面で検出され、環境から患者、患者間、および医療従事者から患者の伝播の可能性が示された。

 

結論

環境サンプリングを用いた病院内のサーベイランスは、真菌感染症予防における重要な要素であると考えられる。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

医療施設内感染は有病率や死亡率を高めるため、極めて重要な解決すべき課題である。なかでも真菌感染症は感染する患者が高度な免役低下状況である場合には重症化するため厳重な感染予防策が必須である。真菌は病院環境のいたる所(本研究では、患者テーブル、輸液ポンプ、患者モニター、内服薬運搬車、スタッフステーション内のコンピューターのキーボードなど)で検出され、環境⇒患者、患者⇒患者、医療従事者⇒患者の異なった感染ルートで拡がり、それが侵襲的処置や不十分な感染対策により患者の体内に侵入した場合には致死的な状況を招くこととなる。移植病棟・血液疾患病棟や ICU などの重症免疫低下の患者を収容する施設においては、適切な環境整備は極めて重要である。

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