風土病的な流行地域におけるバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)菌血症:12 年間のコホートの臨床的特徴とゲノム解析★
Vancomycin-resistant enterococcus bacteraemia in an endemic region: clinical features and genomic analysis: a 12-year cohort O.Abu-Lybdeh*, O. Murik, Y. Oster, M.V. Assous, T. Mann, D.A. Zeevi, S. Benenson, Y. Wiener-Well *Hebrew University of Jerusalem, Israel Journal of Hospital Infection (2022) 121, 105-113
背景
バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)は重要な院内感染病原体であり、世界的に有病率が上昇しつつある。エルサレム(イスラエル)の病院は、VRE 保菌率が高いことで知られている。しかし、局地的長期流行地域における VRE のクローン性については依然として不明である。
方法
2009 年から 2020 年のエルサレムの主要病院 3 施設における VRE 菌血症患者(N = 182)の医療ファイルを精査した。これらの結果を、同時期のバンコマイシン感受性腸球菌(VSE)菌血症患者 100 例と比較し、これらの患者の臨床的および人口統計学的特性について分析した。VRE 分離株の全ゲノムシークエンシング(WGS)を行い、その結果を人口統計学的、疫学的データ、および臨床アウトカムに関するデータとの関連で分析した。
結果
VRE 菌血症患者では、VSE 菌血症患者と比べて、中心ラインの使用、血液腫瘍、および免疫抑制を認める率が高かった(それぞれ 63%対 27%、P < 0.001;25%対 13%、P = 0.02;24%対 13%、P = 0.04)。VRE 菌血症患者では、VSE 菌血症患者と比べて、7 日および 30 日院内死亡率が有意に高く(それぞれ 31%対 18%、P = 0.02;57%対 34%、P < 0.001)、平均入院期間が有意に長かった(39 対 24 日、P = 0.005)。VRE 分離株に対する全 WGS の結果から、単一のクローンが流行しているのではなく、多様なクローンが存在していることが示された。特定民族、地理的分布、または予後不良と関連していたクローンはなかった。
結論
WGS により、エルサレムにおいて、大規模クラスターの拡大ではなく、互いに関連のない小規模のアウトブレイクが発生していることが明らかになった。VRE 菌血症は重篤度の高い患者に認められ、VSE 菌血症と比べて死亡率が高く、入院期間が長いことが示された。
監訳者コメント:
VRE 感染症は元来重篤な基礎疾患を有する患者に発生することがわかっており、VRE の腸管保菌者から、あるいは院内での環境汚染により、入院患者が VRE に感染後腸管に保菌し、感染症を繰り返すなかで使用される抗菌薬による菌交代が起こり、VRE 菌血症にいたると考えられる。さらに、VRE 菌血症患者では VSE 菌血症患者より血管留置カテーテルなどの侵襲的治療が加えられることも多くなり、結果的に菌血症が発生しやすくなり予後が悪くなっている。イスラエルでのこの調査からは小クラスターの発生のみで、特定の系統の株による感染が拡大していることはなかった。
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