重症患者におけるカンジダ・オーリス(Candida auris)の保菌:アウトブレイク時における皮膚および直腸保菌の役割
Colonization by Candida auris in critically ill patients: role of cutaneous and rectal localization during an outbreak G.Piatti*, M. Sartini, C. Cusato, A.M. Schito *University of Genoa, Italy Journal of Hospital Infection (2022) 120, 85-89
背景
2009 年にカンジダ・オーリス(Candida auris)が分離されて以来、この病原体による感染症が世界規模で報告されている。
目的
C. auris が流行している病院において、この病原体による皮膚および腸管保菌の発生率、ならびにそれらと同病原体による感染症との関係について分析すること。
方法
本研究は、イタリアの 1,200 床の病院の集中治療室(ICU)における後向き研究である。C. auris の皮膚スワブ陽性および皮膚保菌者の発生率を、直腸スワブ陽性および腸管保菌者の発生率と比較し、それらについて C. auris 感染症との関係を検討した。
結果
患者計 399 例を対象とした。患者 77 例が C. auris に感染した。ICU におけるスクリーニングによる皮膚スワブの C. auris 陽性率は 24%であった。感染患者および C. auris 腸管保菌者における皮膚スワブの陽性率は 49.1%であり(P = 0.373)、この結果は同じ患者コホートにおける直腸スワブの陽性率と同様であった。このコホートのうち、皮膚のみの保菌者が 39.7%、直腸のみの保菌者が 5.5%であった一方、54.8%が皮膚と直腸の両方に保菌を認めた。皮膚スワブのうち、同一患者において 12.3%が常に陽性であったのに対し 83.6%が経時的に結果が異なっていた一方、直腸スワブでは31.5%が常に陽性であったのに対し、41.1%が経時的に結果が異なっていた(P = 0.000)。腸管保菌は、C. auris 尿路感染症のリスク増加と関連した(P = 0.006)。
結論
C. auris の腸管保菌者は皮膚保菌者よりも少なかったが、継続的に保菌している者が多かった。直腸および皮膚スワブはそれぞれの保菌に対する、また効果的な衛生策のための優れたサーベイランスツールである。C. auris による尿路感染症は、C. auris の腸管保菌に伴って増加するようである。
監訳者コメント:
カンジダ属の感染症と保菌の関係は以前からよく知られており、C. auris だからといって他のカンジダ属と違うということはなさそうである。また腸管保菌と尿路感染症に相関が見られるというのも解剖学的にみて妥当な事象と考えられる。
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