院内重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2 感染症のクラスター形成と複数例のスプレッディングイベント
Clustering and multiple-spreading events of nosocomial severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 infection J. Jung*, S.Y. Lim, J. Lee, S. Bae, Y.-J. Lim, M.J. Hong, S.H. Kwak, E.O. Kim, H. Sung, M.-N. Kim, J.-Y. Bae, M.-S. Park, S.-H. Kim *University of Ulsan College of Medicine, Republic of Korea Journal of Hospital Infection (2021) 117, 28-36
背景
スーパースプレッディングイベント(SSE)および複数例のスプレッディングイベント(MSE)は重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)感染症の特徴であるというエビデンスが増えつつある。しかし、医療現場における SSE またはMSE の可能性に関するデータは限られている。
目的
本研究は韓国の 3 次ケア病院 1 施設で実施した。2020 年 1 月から 12 月 20 日の間に、医療従事者、入院患者およびその介護者において発生した院内新型コロナウイルス感染症(COVID-19)症例を分析した。2 ~ 4 例の二次症例を伴う症例を MSE と定義し、5 例以上の二次症例を伴う症例を SSE と定義した。
結果
COVID-19 患者 65 例を含む 21 件の院内イベント(単一症例イベントは N = 12[57%]、MSE と SSE の合計は N = 9[43%])を特定した。患者 65 例のうち 21 例(32%)は人に感染させる患者であった。人に感染させる患者はそれ以外の患者よりも発症から確定診断までの期間がより長い傾向があった(中央値 2 日対 0 日、P = 0.08)。重要なこととして、患者12 例(18%)は MSE の、1 例(2%)は SSE 1 件の原因であり、合計で 35 例(54%)の二次症例を発生させた。
結論
徹底的な感染制御策を行う病院において、COVID-19 の院内感染症例の約 70%は二次症例を発生させず、5 分の 1 の人に感染させる患者が全症例の約半数を占める SSE および MSE の原因であった。伝播および SSE 予防のためには、症例の早期特定、隔離、広範囲に及ぶ接触者追跡調査が重要である。
監訳者コメント:
感染者の7割は二次感染を引き起こしていない、残り3割の感染者が複数の二次感染を引き起こしているという本論文の結果は、日本で初期のころに解析された「8割の人はひとにうつしていない」とほぼ同様であった。
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