手術器具から生成されるサージカルスモーク中のヒトコロナウイルス RNA 検出★★

2021.11.30

Detection of human coronavirus RNA in surgical smoke generated by surgical devices

T. Yokoe*, M. Kita, T. Odaka, J. Fujisawa, Y. Hisamatsu, H. Okada
*Kansai Medical University, Japan

Journal of Hospital Infection (2021) 117, 89-95


背景

手術器具から生成されるガス状副産物は、まとめて「サージカルスモーク」と呼ばれるが、患者から手術チームに感染性ウイルスを伝播させる危険がある。しかし、サージカルスモークを介した重症急性呼吸器症候群コロナウイルス‐2(SARS-CoV-2)伝播のリスクの評価および軽減に関するエビデンスは不十分である。

 

目的

モデル実験を用いてサージカルスモーク中のヒトコロナウイルス RNA の存在および感染性を確認すること、ならびにサージカルマスクを介したろ過による伝播リスク軽減の可能性について評価すること。

 

方法

ヒトコロナウイルスに感染させたペレット培養 HeLa-ACE2-TMPRSS2 細胞を、電気スカルペルまたは超音波スカルペルでそれぞれ切開した。吸引システムを用いて、サージカルスモークをハイドロゾルの状態で捕捉した。RT-PCR 定量法を用いて、サンプルをウイルス RNA の存在について分析し、プラークアッセイによって感染性を判定した。さらに、サージカルマスクを吸引ラインの中央に置いて、サージカルスモーク中に存在するウイルス RNA のろ過能を評価した。

 

結果

上記のモデルにおいて、採取したサージカルスモーク中に、切開標的中に含まれていたウイルス RNA の 1/106 から 1/105が検出された。サージカルスモーク中に存在するウイルスは、培養細胞においてプラーク形成を誘導できなかった。さらに、サージカルマスクを介したサージカルスモークのろ過により、ウイルス RNA 量が効果的に 99.80%以上減少した。

 

結論

本研究において、サージカルスモーク中にヒトコロナウイルスが存在する可能性が示されたが、ウイルスの感染性は大幅に低減していた。臨床環境において、サージカルマスクを介したろ過により、サージカルスモークによって促進されるコロナウイルス感染に対して、SARS-CoV-2 感染を含めて、十分な追加防御がもたらされるはずである。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

手術中に発生するサージカルスモークによるコロナ感染の危険性を評価した研究であるがウイルス量は 10 万から 100 万分の 1 に減少し、さらにサージカルマスクにより 1,000分の 1 になることから、最終的には人に到達するウイルス量は術野のウイルス量の 1/108  から 1/109 にまで減少し、さらにウイルス分離ができていないことから、感染のリスクはほぼないと判断できそうである、

 

 

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*Medical University of Vienna, Austria

Journal of Hospital Infection (2024) 147, 188-196





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