尿路病原性大腸菌(Escherichia coli)によるバイオフィルム形成:治療を複雑にする要因および尿路感染症の再発
Biofilm formation by uropathogenic Escherichia coli: a complicating factor for treatment and recurrence of urinary tract infections Z. Naziri*, J.A. Kilegolan, M.S. Moezzi, A. Derakhshandeh *Shiraz University, Iran Journal of Hospital Infection (2021) 117, 9-16
背景
尿路病原性大腸菌(Escherichia coli)は尿路感染症(UTI)の主要な原因であり、病院あるいは市中で獲得する可能性がある。UTI の持続と再発のもっとも重要な因子は、尿路病原性大腸菌のバイオフィルム形成能であり、抗菌薬治療から菌自体を保護するものである。
目的
病院獲得型および市中獲得型の UTI 患者から分離された尿路病原性大腸菌の遺伝的関連性、バイオフィルム形成能、バイオフィルム関連遺伝子について研究すること。
方法
UTI の入院患者 49 例および外来患者 51 例の尿サンプルから採取した尿路病原性大腸菌の分離株 100 株について、in vitro でのバイオフィルム形成能をマイクロタイタープレート法により評価した。fimH、papC、sfa/focDE、csgA、crl、afa、flu、bcsA 遺伝子の保有と、尿路病原性大腸菌のバイオフィルム形成能との関連を統計学的に分析した。尿路病原性大腸菌分離株の遺伝的関連性を、腸内細菌反復遺伝子間コンセンサスPCR(ERIC-PCR)により評価した。
結果
全体として、尿路病原性大腸菌分離株の 99%が、in vitro でバイオフィルム形成能を示し、その分離株の 27%は中等度から強度のバイオフィルム形成株であった。尿路病原性大腸菌分離株による中等度から強度のバイオフィルム形成と有意に関連したのは、sfa/ focDE 遺伝子の保有のみであった。樹形図の分析では、外来患者と比較して、入院患者の尿路病原性大腸菌分離株間の遺伝的類似性がより高いことが認められた。
結論
結果を踏まえると、再発性 UTI を予防するために、バイオフィルム形成と封入された尿路病原性大腸菌の両方に作用しうる有効な治療法の選択が重要である。病院の各部門の入院患者において尿路病原性大腸菌クローンの頻度が高いことから、入院患者における尿路病原性大腸菌の蔓延の阻止および病院獲得型 UTI 発生の低減を図るために、より厳重な制御策の必要性が強調される。
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