エアロゾル産生歯科手技:分析法と感染制御策の再評価★

2021.11.30

Aerosol-generating dental procedures: a reappraisal of analysis methods and infection control measures

K.S. Tan*, R.J.J. Chew, P.F. Allen, V.S.H. Yu
*National University of Singapore, Singapore

Journal of Hospital Infection (2021) 117, 81-88


背景

歯科のエアロゾル産生手技は、感染病原体の伝播リスクに関連してきた。しかし、既存の感染制御モニタリング研究は方法論的に不十分であるため、汚染の程度を過小評価している可能性がある。これらの研究では、寒天平板に着地する飛沫のみを捕獲するが、空気中に浮遊した飛沫は捕獲しない落下菌測定法が採用されていた。さらに、汚染の程度を明らかにするために細菌培養が用いられ、非細菌性汚染源についての説明はなかった。

 

目的

本研究では、能動的エアロゾルサンプリングおよび、歯根管治療と歯石除去の 2 つの歯科のエアロゾル産生手技の分析を含むモニタリングプロトコルを確立することによって、これらのギャップを埋めようと努めた。

 

方法

歯根管治療および歯石除去は、標準的なエアロゾル軽減予防策を行って実施した。各手技を通じて産生されたエアロゾルは、エアサンプラー装置を用いてサンプリングを行ったのに対し、治療室の媒介物による汚染と個人防護具は、治療前と治療後に表面スワブを用いてサンプリングを行った。汚染量は細菌培養とアデノシン三リン酸(ATP)アッセイを用いて定量化した。

 

結果

歯根管治療によって産生されたエアロゾルと飛散物は有意ではなく、感染制御策の有効性を裏付けた。逆に、歯石除去によってエアロゾルと飛散物の量は有意に増加した。細菌培養と ATP アッセイを比較した場合、ATP アッセイによって得られた汚染の程度はより大きく、ATP アッセイにより、ヒトが原因の付加的な汚染と、採用した培養条件では回収できなかった細菌による汚染を検出した可能性があることが示唆された。

 

結論

本モニタリングプロトコルは歯科現場において実現可能であり、エアロゾル産生手技中に発生する汚染の程度を判定するものである。これは今後の研究に採用でき、既存の文献の限界を克服できる可能性がある。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

歯科治療におけるエアロゾル発生は、新型コロナウイルス感染症の出現以後歯科医や歯科衛生士にとっては重大な関心事項であり、本論文ではウイルスについての検討はされていないが、歯石除去治療時のエアロゾルの飛散状況から判断すると、治療中の患者が何らかの呼吸器感染を引き起こすウイルスに感染しておれば、飛散したエアロゾル中には感染性のウイルスが大量に混在していることは既に報告されている。適切な防護具とエアロゾルの吸引装置(患者周囲に設置)することで歯科処置で発生する感染性エアロゾルの飛散を防止できる。

 

 

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