フランスの教育病院における 14 年間の手術部位感染症の積極的サーベイランスプログラムの有益性

2021.11.30

Benefits of a 14-year surgical site infections active surveillance programme in a French teaching hospital

C. Bataille*, A.-G. Venier, F. Caire, H. Salle, A. Le Guyader, F. Pesteil, R. Chauvet, P.-S. Marcheix, D. Valleix, L. Fourcade, K. Aubry, J. Brie, P.-Y. Robert, M. Pefau, M.-C. Ploy, N. D’Hollander-Pestourie, E. Couve-Deacon
*CHU Limoges, France

Journal of Hospital Infection (2021) 117, 65-73


背景

手術部位感染症(SSI)は 2 番目に頻度の高い医療関連感染症である。SSI の積極的サーベイランスは、予防策の情報提供およびこれらの予防策の効果の評価に役立つ可能性がある。

 

目的

フランスの教育病院 1 施設におけるSSI の前向き・積極的サーベイランスの14 年間の動向における進化と、SSI 予防策の実行について述べることを目的とした。

 

方法

2003 年から 2016 年に8 つの外科部門で行われたすべての外科手術をモニタリングし、本研究の対象とした。半自動サーベイランス法は、外科医が記入した後に感染管理実践者がモニタリングし、毎週収集される SSI 申告フォーム(患者データ、手術の管理データ、微生物学的臨床検査値を事前に記入済み)から構成された。

 

結果

我々の解析には計 181,746 件の手術が含まれ、3,270 件の SSI(全体の SSI 発生率は 1.8%)が記録された。SSI 発生率は、2003 年から 2016 年にかけて 3.0%から 1.1%に有意に低下した。この低下は、主に表層 SSI および感染リスクが高い手術で認められた。より高い SSI 発生率は、通常のリスク因子が関連する手術で認められた。この 14 年間に手術の実践に複数の進化が起こり、それがこの低下に寄与した可能性がある。

 

結論

本サーベイランスを通じた SSI 発生率の全体的な低下に伴って、本結果から、SSI 発生率の傾向を理解し、局所的なリスク因子を分析し、予防戦略の有効性を評価するための積極的・包括的な病院の SSI サーベイランスプログラムの有益性が明らかになった。これらの知見は、外科医と感染管理実践者の協力の重要性も浮き彫りにした。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

この論文のポイントはサーベイランスの結果そのものよりも「14 年間にわたって、1 つの教育病院で外科医と感染対策担当者が協力して意味のあるサーベイランスを行った」ことである。もちろん示されている結果は「何をどうやってフィードバックすれば良いのか」という疑問にも答える内容である。SSI サーベイランスの構築やデータのフィードバックの方法に悩まれている方は是非お読みいただくと良いだろう。

 

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