現在のケアモデルにおける冠動脈バイパス術後の糖尿病と手術部位感染症との関係

2021.10.31

The relationship between diabetes and surgical site infection following coronary artery bypass graft surgery in current-era models of care

N. Cheuk*, L.J. Worth, J. Tatoulis, P. Skillington, M. Kyi, S. Fourlanos
*Royal Melbourne Hospital, Australia

Journal of Hospital Infection (2021) 116, 47-52


背景

糖尿病は術後感染症のリスク因子として認識されているが、画期的な Portland Diabetic Project の心臓手術に関する複数の研究から、開胸心臓手術後の静注インスリン投与により、ほぼ正常な血糖値が達成されること、また深部胸骨創感染症の発生率が非糖尿病患者と同様のレベルにまで低減されることが実証された。

 

目的

冠動脈バイパス術を受けた患者の現在のコホートを検討して、現在のケアモデルにおいて、糖尿病、高血糖、および手術部位感染症(SSI)リスクの間の関連を評価することを目的とした。

 

方法

2016 年から 2018 年の間に冠動脈バイパス術を受けた連続した患者を、医療関連感染症を対象とした全州規模のデータリポジトリから特定した。個々の患者のカルテレビューから、術後 SSI の臨床特性および記録を入手した。2 型糖尿病、周術期の血糖値およびその他の化学特性について、SSI の発症との関係を分析した。

 

結果

評価対象とした患者 953 例中、冠動脈バイパス術から中央値で 8 日後に 11%が SSI を発症し、深在性 SSI の症例はほとんどいなかった(1%未満)。2 型糖尿病は 41%で認められ、SSI を発症した患者で多くみられた(51%)。多変量解析では、2 型糖尿病には SSI 発症との有意な関連は認められなかったが(オッズ比[OR]1.35、P = 0.174)、体格指数(BMI)は引き続き有意なリスク因子であった(OR 1.07、P < 0.001)。2 型糖尿病患者では、周術期の血糖値には SSI との有意な関連は認められなかった。

 

結論

周術期に静注インスリン投与および抗菌薬予防投与を行っている心臓手術専門施設では、深在性 SSI の発生率は極めて低かった。しかし、患者 10 例に約 1 例 は表在性 SSI を発症していた。2 型糖尿病は、冠動脈バイパス術後の SSI と独立して関連していなかったが、BMI は冠動脈バイパス術後の SSI と独立して関連していた。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

肥満の糖尿病患者においては、血糖コントロールによって SSI の発生率は低減できるが、肥満によるリスクは低減できない。血糖コントロールと肥満は分けて考えなければならないということ。

 

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