咳嗽を誘発する、または気道吸引を伴う医療手技は、エアロゾル発生の増加ならびに SARS-CoV-2 感染リスクと関連するか?迅速システマティックレビュー★

2021.10.31

Are medical procedures that induce coughing or involve respiratory suctioning associated with increased generation of aerosols and risk of SARS-CoV-2 infection? A rapid systematic review

J. Wilson*, G. Carson, S. Fitzgerald, M.J. Llewelyn, D. Jenkins, S. Parker, A. Boies, J. Thomas, K. Sutcliffe, A.J. Sowden, A. O’Mara-Eves, C. Stansfield, E. Harriss, J. Reilly, members of the Independent High Risk AGP Review Panel
*University of West London, UK

Journal of Hospital Infection (2021) 116, 37-46


背景

医療手技により発生するエアロゾルによる SARS-CoV-2 伝播リスクは、懸念の原因となっている。

 

目的

気道吸引に伴う手技または咳嗽やくしゃみを誘発する手技と関連するエアロゾル発生ならびに呼吸器感染症伝播のエビデンスを評価すること。

 

方法

本レビューは PRISMA ガイドラインにより情報を得た。2003 年 1 月 1 日から 2020 年 10 月 6 日までに発表された研究をPubMed で検索した。対象とした研究により、経鼻胃管チューブ挿入、肺機能検査、鼻腔内視鏡検査、嚥下障害評価、ならびに気道クリアランスにおける吸引が、エアロゾル発生または SARS-CoV-2、SARS-CoV、MERS、インフルエンザの伝播を引き起こすか否かを検討した。バイアス評価のリスクは、評価の頑健性、交絡因子の補正、臨床業務への適用可能性に焦点を置いた。

 

結果

1 次研究 18 報およびシステマティックレビュー 2 報を対象とした。疫学研究 3 報では、経鼻胃管チューブ挿入と呼吸器感染症発症の関連は認められなかった。シミュレーション研究 1 報では、肺機能検査と関連するエアロゾル発生量は少ない/非常に少ないことが示された。内視鏡下副鼻腔手術のシミュレーション研究 7 報では、エアロゾルの有意な増加が示唆されたが、結果には一貫性が認められなかった。一方、臨床試験 2 報では、マイクロデブリッダー/ドリルの使用と関連する空中浮遊粒子が認められた。一部のシミュレーション研究は、粒子の検出に頑健な評価法を使用しなかったため、臨床条件と同等とみなすのは困難である。

 

結論

レビューに含まれる手技が、呼吸器感染症伝播のリスク増加と関連することを示唆するエビデンスは不足していた。リスクの軽減を図る予防策にさらに照準を合わせるために、SARS-CoV-2 伝播のリスクを高める医療手技の特性および患者の特性を明確にするさらなる研究が必要である。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

エアロゾル発生処置だけでなく、室内換気状態(換気回数や気流)なども影響するために一定の見解が出しにくい事象だと考えられる。

 

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