イタリアの輸血されたサラセミア患者の C 型肝炎ウイルス感染症アウトブレイクの臨床的リスク管理における系統発生解析
Phylogenetic analysis in the clinical risk management of an outbreak of hepatitis C virus infection among transfused thalassaemia patients in Italy W. Mazzucco*, V. Chiara di Maio, F. Bronte, L. Fabeni, R.M. Pipitone, S. Grimaudo, D. Ferraro, C. Marotta, M. Aragri, M. Macaluso, F. Vitale, F. Di Raimondo, F. Ceccherini-Silberstein, V. Di Marco *University of Palermo, Italy Journal of Hospital Infection (2021) 115, 51-58
背景
C 型肝炎ウイルス(HCV)感染症の発生は効果的なリスク管理法によって減少しているが、引き続き医療現場において患者間伝播が報告されている。
目的
イタリアの病院 1 施設のサラセミアセンターで、追跡調査を行った外来サラセミア患者 128 例の HCV アウトブレイク 1 件の臨床的リスク管理における系統発生解析の使用について報告すること。
方法
疫学調査および根本原因分析を実施した。すべての急性肝炎患者と慢性感染が判明している患者を対象に、HCV RNA、HCV 遺伝子型判定、HCV ゲノム領域(NS3、NS5A、NS5B)配列決定の検査を行った。伝播クラスターを特定するために、ベイズ法を用いて各遺伝子の系統樹を作成した。
結果
すべての急性肝炎患者は HCV 遺伝子型 1b に感染していた。遡及調査を含む根本原因分析によって献血者は HCV の伝播源から除外された。急性感染患者 7 例および慢性感染患者 8 例を対象に実施した系統発生解析によって、慢性 HCV 感染患者と急性 HCV 感染患者を各 1 例以上含む 4 つの伝播クラスターが明らかになった。同一のクラスターの患者全員が、同日に輸血を受けていた。急性肝炎患者 2 例は 4 週間以内に HCV を自然消失し、レジパスビル・ソホスブビル配合剤を 6 週間投与された患者 9 例は全員が持続性ウイルス学的著効を達成した。
結論
根本原因分析と分子疫学の併用は、HCV アウトブレイクの発生源を解明するのに有効であった。抗ウイルス療法は感染症の慢性進行と治療室および家庭環境でのさらなる伝播を防いだ。
監訳者コメント:
根本原因分析と分子疫学の併用により、HCV アウトブレイクの発生源を確認した論文である。感染源・感染経路についてのさらなる解明には、記述疫学が必要であろう。
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