病院環境における 5 つの SARS-CoV-2 迅速抗原検出検査の比較および日常診療における 1 つの抗原検査の性能:隔離予防策の指針として有用なツールか?★★

2021.08.31

Comparison of five SARS-CoV-2 rapid antigen detection tests in a hospital setting and performance of one antigen assay in routine practice: a useful tool to guide isolation precautions?

E. Van Honacker*, K. Van Vaerenbergh, A. Boel, H. De Beenhouwer, I. Leroux-Roels, L. Cattoir
*OLVZ Aalst, Belgium

Journal of Hospital Infection (2021) 114, 144-152


背景

病院環境では、隔離策および対象を絞った入院の指針として、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス‐2(SARS-CoV-2)の迅速な検出が必要とされる。

 

目的

5 つの SARS-CoV-2 迅速ヌクレオカプシド蛋白抗原検出(RAD)検査(Biosynex 社製、Biotical 社製、Orient Gene 社製、Panbio 社製および SD Biosensor 社製)の診断性能を評価すること、また救急部門における SD Biosensor 社製検査の性能および実施の影響を記述すること。

 

方法

5 つの RAD 検査の感度および特異度を、以下の呼吸器サンプル 100 個について分析した:リアルタイム RT-PCR で確認された 60 個の SARS-CoV-2 陽性サンプル、24 個の SARS-CoV-2 RNA 陰性サンプル、および他の呼吸器病原体に陽性の 16 個のサンプル。製造者のプロトコールに従って、著者らが日常医療においてリアルタイム RT-PCR に使用されているトランスポートメディアを対象に、抗原検査の妥当性を検証した。SD Biosensor 社製の RAD 検査を、迅速診断および対象を絞った入院のためのスクリーニング法として導入した。

 

結果

5 つの RAD 検査について、サイクル閾値 26 未満のサンプルにおける感度は 88.9% ~ 100%の範囲、また特異度は 46.2%~ 100%の範囲であった。導入期間の間、4,195 件の RAD 検査が実施された。迅速 RAD 検査の結果により、47 例が通常病棟に、110 例は一時的 COVID-19 病棟に入院することなく、計 157 例が直接新型コロナウイルス(COVID-19)コホート病棟に直接入室した。

 

結論

SD Biosensor 社製、Biotical 社製および Panbio 社製の SARS-CoV-2 抗原検査は、全般的に許容可能な性能を示し、感染性を有する患者の大部分を同定した。SARS-CoV-2 感染症の有病率が高い現状において、RAD 検査は、感染予防策の指針となり対象を絞った入院を支援する迅速スクリーニングツールとして使用できる。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

迅速抗原検査の感度はウイルス量に影響されるため、本論文でも Ct 値 26未満であれば臨床現場でほぼ間違いなく使用可能(感度は 90%以上)としている。一方、Ct 値が 26 以上 ~ 30 未満になると、急激に感度が低下し、感度が 44% ~ 88.9%とキット間差が明確になり、さらに Ct 値 30 以上では 12.5%から 50%にまで大きく低下する。日本のメーカーの迅速抗原キットにおいても Ct 値 25 以下であれば 90%以上の良好な感度でかつ偽陰性が少ないことが報告されている。しかしながら Ct 値が 30 前後になると、偽陰性率が高くなり、陽性者検索のためのスクリーニング検査には向かなくなる。したがって、発症早期の「有症状」患者であればウイルス量が多く迅速抗原キットが早期発見につながるが、無症状や濃厚接触者、感染後長期経過している場合での検査は感度が下がってしまう。迅速抗原キットの性能を判断する際に、対象とした検体のウイルス量が大きく感度を左右するため、Ct 値との比較のなかで慎重に考慮する必要がある。

 

 

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