医療関連感染症が入院期間に及ぼす影響
Impact of healthcare-associated infection on length of stay S. Stewart*, C. Robertson, J. Pan, S. Kennedy, L. Haahr, S. Manoukian, H. Mason, K. Kavanagh, N. Graves, S.J. Dancer, B. Cook, J. Reilly *Glasgow Caledonian University, UK Journal of Hospital Infection (2021) 114, 23-31
背景
患者の入院期間の延長は、医療関連感染症(HAI)による負担の重要な指標である。
目的
HAI に起因する入院期間の延長について推定すること。
方法
本稿は、Evaluation of Cost of Nosocomial Infection(ECONI)研究の一環として、国民保健サービス(NHS)スコットランドの教育病院ならびに総合病院それぞれ 1 施設において観測した HAI の 1 年間前向き発生率研究である。一晩入院した成人患者もすべて含めた。欧州疾病予防管理センター(ECDC)の定義により HAI を診断した。HAI の時間依存性および死亡と退院の競合リスクを説明するために多状態モデルを用いた。
結果
HAI に起因する入院期間の延長は 7.8 日(95%信頼区間[CI]5.7 ~ 9.9)であった。入院期間中央値は、HAI 患者では 30 日、非 HAI 患者では 3 日であった。HAI 症例と非 HAI 症例の入院期間の単純比較では、入院期間の延長は 3.5 倍(27 日対7.8 日)と過大評価された。入院期間への影響がもっとも大きかったのは、肺炎(16.3 日、95%CI 7.5 ~ 25.2)、血流感染症(11.4日、95%CI 5.8 ~ 17.0)、手術部位感染症(9.8 日、95%CI 4.5 ~ 15.0)であった。年間に HAI により 58,000 入院患者延べ在院日数が占めると推定される。
結論
HAI 発生率が 10%低下すると、5,800 入院患者延べ在院日数が利用できる。これはスコットランドの年間の待機患者 1,706 例の治療に利用でき、計画された治療を待機する患者数を低減する一助となるであろう。本研究は、感染予防・制御策への投資決定において、地域・国内・国際的に重要な示唆を与えるものである。
監訳者コメント:
医療関連感染症への罹患は、医療経済と患者安全にまたぐ課題であり、感染事例においては医療経済的に患者・病院・国にとって大きな負担となる。医療関連感染症の有り無しで、総医療費の違いや在院日数の違いを明らかにすることで、病床利用率の改善策へと繋がることが期待される。
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