高頻度の医療関連微生物に対する短期サイクルによる蒸気化過酸化水素の有効性評価★
Fast-cycle hydrogen peroxide nebulization against frequent healthcare-associated micro-organisms efficacy assessment L. Cobrado*, P. Ramalho, E. Ricardo, M.-M. Azevedo, A.G. Rodrigues *University of Porto, Portugal Journal of Hospital Infection (2021) 113, 155-163
背景
過酸化水素(H2O2)ベースの技術は現在、病院環境における微生物汚染の制御を目的として用いられている。しかし、長期サイクルが必要となるために病室の使用間隔が長くなり、これによって除染技術の広範な実施が妨げられている。
目的
短期サイクルの蒸気化 H2O2 について医療関連微生物に対する有効性を評価し、さらに多剤耐性株および多剤感受性株の間で比較を行った。
方法
7% H2O2 蒸気化溶液の有効性を、細菌と酵母様真菌を対象に、標準サイクル(1 時間)と短期サイクル(15 分)で比較した。多剤耐性株および多剤感受性株を、ポリ塩化ビニル、ステンレススチール、リノリウム、ナッパレザー、およびフォーマイカ試片に播種し、それらの増殖能を比較した。
結果
全体で、標準サイクルの平均有効性は 82.5%(±17.0)から 95.9%(±8.3)の範囲であった一方、短期サイクルの平均有効性は 84.4%(±17.0)から 95.7%(±10.5)の範囲であった。試験を行ったサイクルおよび材料の大部分において、統計学的に有意な差は認められなかった。検査を行ったすべての菌株について、各サイクルの有効性に関して差は認められなかった。
結論
短期サイクルには、標準サイクルと同様の非常に高い消毒の有効性が認められた。さらに、多剤耐性株と多剤感受性株の間で比較した場合も、同様の有効性が認められた。本研究は、この除染技術の広範な実施を支持しており、病室の使用間隔の短縮、費用の削減、および間接的な感染伝播の抑制という利点も期待される。この短期サイクルについて、他の世界的な新興微生物の脅威に対する有効性をさらに評価することが強く推奨される。
監訳者コメント:
Clostridioides difficileなどの細菌芽胞あるいはアシネトバクターなどの多剤耐性菌などが、環境表面の清拭消毒により適切に除去されずに残存していると、汚染環境が病原体のリザーバーとなり次の患者に感染を引きおこすことが報告されている。過酸化水素蒸気による環境消毒は、手術室や患者退院後病室の最終清掃の手法として現在広く利用されるようになった。本論文では、耐性菌を含む一般細菌及び真菌における殺菌性能が 15 分という短時間サイクルでも可能であることを証明したが、細菌芽胞に関する検討がなされておらず今後の課題として残されている。
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