イタリアにおける医療関連感染症の負担:2016 年全国調査による発生率、寄与死亡率および障害調整生存年(DALY)★★

2021.07.31

Burden of healthcare-associated infections in Italy: incidence, attributable mortality and disability-adjusted life years (DALYs) from a nationwide study, 2016

V. Bordino*, C. Vicentini, A. D’Ambrosio, F. Quattrocolo, Collaborating Group, C.M. Zotti
*University of Turin, Italy

Journal of Hospital Infection (2021) 113, 164-171


背景

医療関連感染症(HAI)は、公衆衛生上の脅威として大きくなりつつある。疾患負担を障害調整生存年(DALY)として評価することで、病的状態と死亡の組み合わせを一つの数字で表すことができる。なぜなら DALY は障害を有して生存した年数と死亡により失われた年数を合算したものであるからである。

 

目的

イタリアにおいて、最も重大な HAI について、発生率、寄与死亡、および疾患負担を評価すること。

 

方法

2016 年に行われた急性期病院における HAI の全国点有病率調査の研究サンプルの有病率データを用いて、5 種類の HAI の発生率を推定した。Burden of Communicable Diseases in Europe(BCoDE)プロジェクトの方法を用い、疾患モデルをイタリア集団に適用して DALY を算出した。

 

結果

推定により、2016年のイタリアにおける年間の HAI 新規症例は計 641,065例(95%不確実性区間[UI]585,543.00 ~699,207.90)、死亡は計 29,375例(95%UI 23,705.97 ~ 35,905.80)であった。年間の総 DALY は推定で 424,657.45(95%UI 346,240.35 ~ 513,357.28)であり、これは一般集団 100,000 人あたり 702.53 DALY(95%UI 575.22 ~ 844.66)に対応する。血流感染症は総 DALY の大部分(59%)を占め、総 DALY のうち医療関連肺炎は 29%、手術部位感染症は 9%、CDI は2%、および尿路感染症は 1%未満であった。

 

結論

本研究の結果から、イタリアにおいて HAI はかなりの負担になっていることが示唆される。感染予防・制御の取り組みによって HAI の負担を減らすことは、達成可能な目標である。本研究は、これらの方策を実施する上で政策決定者の指針となり得るデータを提供するものである。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

イタリアの急性期で 2016 年の HAI のインパクトを障害調整生存年(DALY)示した全国規模の報告。パンデミック前のデータとなるが、パンデミック中や後の新型コロナ感染症の影響によりどのように変化するのかも気になるところ。

 

 

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