カルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌の疫学の進化:1 病院の 9 年にわたる感染予防・制御の対応★
Evolving epidemiology of carbapenemase-producing Enterobacterales: one hospital’s infection prevention and control response over nine years
M. Foley*, F. Duffy, M. Skally, F. McCormack, C. Finn, M. O’Connor, J. Cafferkey, T. Thomas, K. Burns, F. Fitzpatrick, K. O’Connell, E.G. Smyth, H. Humphreys
*Beaumont Hospital, Ireland
Journal of Hospital Infection (2021) 112, 61-68
背景
カルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌(CPE)の伝播予防は病院の感染予防・制御チーム(IPCT)にとって重要な課題の 1 つである。制御策にはリスクのある患者のスクリーニング、接触者追跡、保菌者の隔離と接触予防策が含まれる。
目的
主にベッドが複数ある患者病室を有する 3 次急性期病院 1 施設において、2011 年から 2019 年まで CPE 症例の増加に伴い感染予防・制御策の進化を評価した。IPCT に対する影響および IPCT の対応と活動もレビューした。
方法
CPE の散発症例からアウトブレイクおよび局地的な流行へと変化する疫学に IPCT がどのように適応したか評価するため、当院検査室、IPCT およびアウトブレイク会議の記録から前向きに収集した CPE のデータをレビューした。
結果
178 症例のうち 152 症例(85%)は医療関連であり、2017 年から症例数の著しい増加がみられた。検査されたスクリーニングサンプル数は年間で 2011 年の 1,190 件から 2019 年の 16,837 件へと増加し、6 件のアウトブレイクが記録され、後年により大規模なアウトブレイクが特定された。OXA-48 カルバペネマーゼは分離株の 88%で検出され、アウトブレイク会議への出席だけで IPCT メンバーの 463.5 時間を占め、スタッフの時間に関係した。
結論
IPCT がかなりの努力と時間を費やしたにもかかわらず CPE 症例数は毎年増加しており、ある程度はスクリーニング要請の増加に対応したものではあるが、後年により多くのアウトブレイクが報告された。インフラの欠如、CPE の疫学の変化、国の方針が症例数増加の主な要因である。
監訳者コメント:
アイルランドの3時急性期病院における9年間のCPE制御の取り組みをまとめた論文である。この期間、スクリーニングの件数は10倍以上になっており、陽性検体の検出数の増加はそれに伴い見つけ出されている部分もあるかと思われた。アウトブレイクに関連する人数が調査期間の後半3年間で急増していたが、論文からは詳細は読み取ることができなかった。感染源、感染経路の特定を含む疫学調査がアウトブレイクの主だったものにだけでも実施されなければ状況の改善につなげていくことはむつかしいと思われた。かなりの時間と労力を費やしての結果とあり、想像に難くない。
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