化学的汚染除去後の N95 マスク上の過酸化水素およびオゾンの残留レベルの評価

2021.05.30

Evaluation of hydrogen peroxide and ozone residue levels on N95 masks following chemical decontamination

 

P. Kumkrong*, L. Scoles, Y. Brunet, S. Baker, P.H.J. Mercier, D. Poirier

*National Research Council Canada, Canada

 

Journal of Hospital Infection (2021) 111, 117-124

 

 

背景

過酸化水素およびオゾンは N95 マスクの供給不足時に化学的汚染除去剤として使用されてきた。マスク上に残留した場合、両方の化学物質の残留物は皮膚接触および経気道曝露によって健康上の害となる可能性がある。

 

目的

化学的汚染除去後のマスク表面上の過酸化水素およびオゾン残留物の特性評価。

 

方法

オゾン存在下で過酸化水素のエアロゾルスプレーまたは蒸気を使用する 2 つの市販のシステムを用いて、様々な N95 マスクの汚染除去を行った。汚染除去後、湿気と潜在的な化学残留物を除去するためマスクを外気にさらした。残留している過酸化水素とオゾンはマスク表面上方の気相でモニタリングし、マスク表面上の直接的な過酸化水素残留物は比色分析を用いてモニタリングした。

 

結果

汚染除去後、5 時間のエアレーション後でも過酸化水素とオゾンはマスク付近の気相で検出可能であった。過酸化水素は試験したすべてのマスク上でも検出され、0.5 時間のエアレーション後にマスク 1 枚あたり最大 56 mg までの値が認められた。すべての残留物はエアレーションによって徐々に減少し、分解と蒸発が原因である可能性が高かった。

 

結論

過酸化水素とオゾンは汚染除去後も N95 マスク上に存在した。適切なエアレーションにより、マスク付近の気体の残留レベルは米国労働安全衛生局が定義する許容レベルまで低下した。マスク使用者の安全を確保するため、これらの残留物をモニタリングする信頼できる試験法が必要である。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

一般的には過酸化水素やオゾンは本研究で示されるような汚染除去処置を行えば人体には影響のない濃度に低下すると考えられている一方で、実際には十分なデータはないともされてきた。本研究では、実際に N95 マスクには過酸化水素やオゾンがかなり低いレベルではあるが残存していることを示している。特にマスクは口や鼻に直接接触するものであり、安全性が担保されるよう、今後も検討を重ねる必要がある。

 

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